【ニューヨーク】三線手に僧侶熱唱 山田和孝さん


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三線を手に島唄を聞かせる禅宗僧侶の山田和孝さん=米国ニューヨーク

 ニューヨークの街角や地下鉄の構内はミュージシャンや街頭芸人にとって格好の舞台だ。大都市の騒音をくぐり抜けるように、琉球三線の音色に乗って「島唄(うた)」が流れる。源流をたどると、三線を抱え奇妙な衣装を身にまとい熱演している人物を発見した。

KOSSANの名で知られている日本人、山田和孝さん(34)だった。だが禅宗僧侶と知って驚かない人はいない。
 東京の南禅寺派の寺で生まれ、子供のころから修行した。大学の専攻は宗教でも哲学でもなかったが、卒業後8年間修行に専念した後、1週間の休みを取り沖縄旅行へ出る。長年の厳しい規則正しい修行生活から一転した自由な雰囲気。優しく、美しい歌の国沖縄に溶け込んだ。国際通りの楽器店に立ち寄り三線を手にし「店主の手ほどきを受けたら手放せず即購入したのが2005年2月14日だった」と僧侶は言う。
 同年9月、ニューヨークの寺に派遣された。道場で米国人に座禅を教え、メトロポリタン美術館前で経をあげながら托鉢(たくはつ)などの日課をこなす。「たまたまセントラルパークで三線の練習をしていたら見知らぬ人が1ドルを置いていった」。自分の音楽に金を出してくれる人がいることに驚き、感動したと語る。
 気をよくして地下鉄構内での演奏許可を得るため交通局のオーディションを受けた。合格率は当時10%と厳しい中、見事琉球三線・民謡で合格、以後禅宗と音楽活動の二足のわらじを履く。
 昨年はアメリカ移民局からのビザ受領のため日本で待機することになったため、1月宮古の農家に住み込みキビ刈りの手伝いをし、収穫期終了後もそのまま滞在し5月まで現地で三線の練習に励んだ。
 今では季節を問わずニューヨーク市や各種団体、地下鉄、バーやレストランでの演奏に引っ張りだこの多忙なスケジュールだ。僧侶の衣、袈裟(けさ)姿にローラーブレードで街を行く姿がNYタイムスのサイトでも紹介された。
 禅と音楽で人を幸せにするのが願い。丸刈りにそり上げるのも、女装やかつらを身に着けて演奏するのもユニホームとして考えていいようだ。
 三線の音色の美しさ、琉球民謡の優しさと楽しさを伝えたいと語る目は強く輝く。
(比嘉良治通信員)