【島人の目】アメリカの食事情


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 一般的にアメリカ人のキッチンは、整然としていてピカピカである。油汚れが目立ち台所用品やら食料品などが所狭しと置いてある、アジア系の台所とは違う。

 以前、隣人に対し、ほとんど毎日スーパーに行き、夕食の準備に1時間以上かかると話すと「何を作っているの?買い物は1週間に1度でいいし時間の無駄よ」と言われた。
 普通、各家庭のガレージには大型冷凍庫があり、冷凍食材がぎっしり。その隣人の夕食は週末は宅配のピザかバーべキュー。庭のグリルで焼くのはホットドッグに市販の冷凍ハンバーガーミートか脂身の多い牛肉の塊など。野菜はと言うと買ってきた袋入りのサラダ菜をそのままボールに入れ、市販のドレッシングをたっぷりかける。それが唯一の野菜だ。
 もちろん、料理好きな人もいてインスタントではなく、チキンスープやラザニアなど「お袋の味」的手料理を時間をかけて作る家庭もある。
 だが、日本人のように、主食と幾つかの副菜に、汁物とバライティーに富み栄養価を考えた料理をひと手間かけて作るという意識はまずない。何事にも効率良くがモットーの国民性か、簡単で手軽にできることが第一だ。TVディナーたるや冷凍食品が充実しレンジでチンで済む。
 一年中出回る野菜には旬はなく、料理の味付けは隠し味もなく、たいてい大味。そして子どもから大人まで毎日幾種類ものビタミン剤を摂取する。
 アメリカの食事情は食文化の観点から言うと低レベルではないかと思う。米国民の成人の3分の2以上が肥満だと言われているのもうなずけるわけだ。
 さてさて、戦後アメリカの食文化の恩恵を受けてきた沖縄。いつしかアメリカの安い肉や缶詰、そしてファストフードが沖縄の食文化になった。そしてとうとうメタボ男性が増え、平均寿命の全国順位が下落した。アメリカに占領された結果の負の遺産だ。沖縄の野菜や豆腐中心の昔ながらのスローフードを見直し、健康な食生活で長寿を取り戻してほしいと里帰りするたびに思う。
(鈴木多美子、米国バージニア通信員)