世界エイズデー 恐れず侮らず早期検査を


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 12月1日は「世界エイズデー」。かつては「死の病」と言われたエイズだが、先進国では通常の社会生活が送れるほどに治療法は進歩し、確立されている。
 しかしそれも、発症前に早期に感染を発見し、適切な治療を受けてのことだ。早期検査、受診がいかに重要かが分かるが、実態は必ずしもそうなっていない。社会全体であらためてエイズに対する理解を深め、早期検査の機運を醸成したい。

 県健康増進課によると、2011年に県内で検査や受診で見つかったHIV感染者は13人で、エイズ患者は11人。人口10万人当たりのHIV感染者は全国6番目に多くエイズ患者は全国最多だ。
 県内三つのエイズ治療拠点病院(琉球大学付属病院、県立中部病院、県立南部医療センター・こども医療センター)での集計ではさらに多く、11年の新規受診者はHIV感染者は27人、エイズ患者は14人。HIV感染者数はエイズ患者数の6倍はいるといわれており、感染しながらも検査、受診していない人が多いことが分かる。
 県内のHIV抗体検査件数は11年は2316人で、10万人当たりで全国1位だが、07年の3755人をピークに毎年減少している。治療法の進歩などもあり、関心が薄らいだことなどが要因として考えられるという。
 しかし注意を要するのは、感染から発症までの潜伏期間が急速に短くなっているということだ。
 従来、潜伏期間は7-10年といわれたが、現在では感染者の75%は感染から3年以内の治療開始が必要だ。感染が繰り返されるにつれ、免疫に抵抗力を備えたウイルスが増加したことが考えられるという。早期発見が一層重要になっている証左だ。
 エイズに関する社会的な誤解や偏見が、検査を必要としている人に二の足を踏ませ、感染者や患者を潜在化させている大きな要因でもある。家庭や学校などでも、人権の問題なども含めエイズ教育を深めたい。
 厚生労働省のエイズ動向委員会の発表では、11年の新規エイズ患者は全国で473人で、1984年の調査開始以来、最も多い。本年度のキャンペーンテーマは「エイズは続いている」だ。
 県は今月、県内五つの保健所で休日検査や夜間検査などの体制を拡充する。恐れず、侮らず、この機会に検査を受けてほしい。