『ニャンコ トリロジー』和田誠著


社会
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そしてパレードは続く
 イラストレーター、和田誠による「和田家の猫の三代記(トリロジー)」。これまで和田さんちで家族として暮らしてきたニャンコたちの、思い出が詰まったエッセーが発売されました。

 お友達がヨーロッパに旅行するということで2週間ばかり預かった「ドージー」。その出会いで猫のかわいさにすっかりやられた和田夫妻は、しばらくして猫を飼い始める。
 初代は赤塚不二夫から譲り受けた「桃代」。お母さんっ子で、妻のレミさんが外出するとこの世の終わりとばかりに泣き叫んでいた。2代目は息子が拾ってきた「シジミ」。シジミ貝によく似た柄だったという。16年間家族として暮らしたが、最期はふらりと家を出たまま帰らず、再会した時はすでに冷たくなっていた。3代目は「チー」。シジミを亡くししばらく猫が不在だった和田家の庭に、ある朝迷い込んだ子猫である。日本語がわかり、「カワイイ」という言葉に反応する。はじめはアメリカン・ショートヘアーのような毛並みだったが、3年たつとただの猫になった。
 人であれ猫であれ、たとえば「あの人は怒りっぽい」とか「あいつは情にもろい」なんていう個性や性格ってそれぞれにある。確実にある。けれど和田家の猫たちはおしなべて「かわいい」のだ。もちろん個性はそれぞれあっただろうけど、読んでいるとなによりもまず「かわいい子」という印象を抱く。それはつまり、著者である和田誠がいかに歴代ニャンコたちに骨抜きにされたかの証しだろう。実際、文中で「かわいい」は頻発されてるし。そのメロメロ具合が読んでいて微笑ましい。
 それだけ文字通り猫かわいがりしている猫の物語ではあるが、脇役として登場する妻・平野レミの存在感にも注目したい。チーを突然「ヤマモトさん」と呼んだりと、たまに出るエピソードはどれも絶好調が過ぎる。
 どんなにかわいくていとしくても、猫との蜜月はもちろん永遠には続かない。ある日やってくる別れの瞬間はどれも悲しい。中でもとりわけ、シジミの書いた手紙はせつない。和田さんの挿絵も線まで泣いている。
 そうしてぽっかり空いた穴を、また新しい家族が埋める。ふわふわしてあったかい、ニャーと鳴くかわいい子がふらりとやって来て、ぽっかりと空いた穴の中で毛づくろいを始める。そうして猫と人のパレードは、気ままにご機嫌に、また始まるのだ。
 (河出書房新社 1500円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

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