<金口木舌>「絶食系」の時代


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 北海道のヒグマがシカやサケなどの肉食から、植物や果実中心の草食に変化しているそうだ。北海道大学が先週発表した。開発が生態系に影響したという

▼人間界でも草食化は進む。こちらは恋愛の話。ここ数年、異性との交際に消極的な「草食系男子」が増加中だが、新たに「絶食系男子」まで現れた。恋愛に全く興味がなく、女性抜きで人生を楽しむ男性のことだ。面倒くさい交際よりも自分の趣味や生活を重視するらしい
▼2010年国勢調査によると、50歳時点での生涯未婚率は男性20%、女性11%。30年前と比べ男性7倍、女性2倍だ。厚生労働白書では「一生結婚するつもりはない」若者が30年前の2%から10%に増えている。全国一の出生率を誇る沖縄も例外ではない。未婚率は50代男性で全国2位の25%、50代女性は4位の13%と高い
▼晩婚化・非婚化は生活様式や価値観の多様化とも言えるが、一方で経済的要因も見え隠れする。若い世代に貧困や非正規雇用が増え、家庭を持つ余裕がないと識者は分析する
▼国は先日、少子化社会対策大綱を発表した。若年層の「婚活支援」も目玉の一つだが、抜本的な雇用改善にまで踏み込まなければ成果は期待できない
▼結婚するしないは基本的には個人の自由。でも、肉食系になりたくてもなれない構造的要因があるのなら、もっと社会ができることはある。