<社説>問題行動・不登校調査 抜本対策で問題の解消を


社会
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 文部科学省の問題行動・不登校調査で、県内の学校現場の深刻な状況が浮かび上がった。いじめによる重い被害が疑われる重大事態の件数が急増している。

 いじめの全体の認知件数など、前年比で減少している項目もあるが、人口比で見ると全国平均を上回る数値がある。だれもが安心して学べる環境づくりに向けた対応が必要だ。
 重い被害が疑われる重大事態は20年度調査の14件から大幅増の25件。被害者の生命や心身に重大な被害が生じた疑いがある「1号重大事態」は13件(前年度比4件増)、相当の期間にわたって欠席を余儀なくされた疑いがあると認められた「2号重大事態」は15件(同5件増)だった。
 いじめの認知件数自体は前年度に比べて減少しており、県教育委員会は「学級経営の充実」などを理由に評価しているが、千人当たりの認知件数は52・2件で全国の47・7件を上回っている。認知できていないものはないか。
 いじめ防止対策推進法は、重大事態について学校や教委は速やかに事実関係を調べ、被害者側に情報提供するよう定める。調査組織を設置した事態については、可能な範囲で適切に共有し、防止などにつなげてもらいたい。
 暴力行為の発生状況も小中高の全体では減少している。前年比223件減の2056件だった。ただ、対教師が35件増の186件、器物損壊が10件増の241件となっている。子どもたちのSOSに気がつくことができていないことが背景にはないだろうか。細かな分析が必要だ。
 子ども個人や学校、教員だけの問題ではなく、私たちの社会全体の問題として捉えなければならない。
 教員不足で現場からは悲鳴が上がるが、人材や予算は不足したままだ。交流サイト(SNS)を通じた「ネットいじめ」は全国で過去最多の2万1900件となり、学校現場だけでは対処できない状況にある。スクールカウンセラーの拡充も必要である。
 家計に与える影響を示すデータもある。NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」の調査によると、不登校の子どもがいる家庭の約9割が不登校によって支出増となったと回答したという。保護者が勤務日数を減らさざるを得ず、減収になった可能性も指摘されている。
 一方、オンライン授業など情報通信技術(ICT)を活用することで対応できることがあるかもしれない。
 いじめなど問題行動で学ぶ機会が失われたり、身体に影響を受けたりするような理不尽があってはならない。
 沖縄の歴史事情もあって、まだ全国とは差のある教育費について、現行の2倍以上とすることを提案してきた。大胆な予算措置を実現し、問題行動・不登校の解消に向けた抜本対策に取り組んでもらいたい。