<金口木舌>念のために600億円?


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 子どものころに「無駄遣いはするな」と教えられた。それなのにいまだ「持っている分だけ使う」という悪癖が染み付いている。反省はするものの、月末のやりくりに頭を悩ませる

 ▼お金や権力は「あれば使いたくなる」のが人の性分か。将来設計よりも目の前の損得勘定が先立つのは困りものだが、これが個人のことなら目くじらは立てまい。問題は時の政権が使い方を誤るときだ
 ▼突如吹いた総選挙の風は年末投開票のスケジュールまで取り沙汰される。しかしその理由が「消費増税先送りの是非を問う」であり、原発再稼働など不人気政策の審議が始まらないうちに、などという解説を聞くと疑問符が浮かぶ
 ▼案の定、民主党など野党からは「大義なき解散」との批判がある。自民党の高村正彦副総裁は「デフレ脱却の道でいいのかどうかを再確認する『念のため選挙』になる」と述べた
 ▼総務省が公表するデータでは、2009年の総選挙の費用は総額約600億円。今回も選挙を実施するなら同じくらいの公費が使われる。国民1人当たり600円は民主主義のコストとして高いのか安いのか
 ▼国民の信を問う、といえば聞こえはいいが、有権者が求めるのは政策の丁寧な説明であり、好調とされる景気が実感できる暮らしだ。「大義なき」まま「念のため」に巨額の公金を費やす行為は本当に必要なものだろうか。