<金口木舌>ガール・エフェクト


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 アジア初のノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センが受賞前の1990年に発表した論文は衝撃的だった。「世界で1億人以上の女性が姿を消している」と記した

▼多くの国で女性は男性より長生きし、女性の人口比は高い。アフリカや南米諸国の貧しい地域でも同様だ。しかし男性優遇や女性への差別が根強い地域では比率は逆転する
▼一人っ子政策の下で男児を優先する中国、持参金が少ないと虐待するインド、家族への服従が絶対のパキスタンなどで女性は命を奪われたり、人身売買されたりして姿を消す
▼パキスタンで銃撃された15歳の少女マララさん。回復に安堵(あんど)するが、そもそも女子教育を禁じ、女子校を破壊したイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動」(TTP)の残虐行為を告発した彼女が狙われるのは理不尽だ
▼東アジアの経済発展のキーワードに「ガール・エフェクト」が言われる。抑圧を緩めて少女を少年と同様に教育し、経済活動の担い手とした地域は爆発的に発展したからだ
▼マララさんの活動は抑圧と貧困から脱出する第一歩だった。彼女は気丈に言った。「彼ら(TTP)は私を止めることはできない。勉強は家でもできる。世界の人々に訴えます。私たちの学校とパキスタンを救って」。マララさんの回復を祈りつつ、私たちに何ができるか考えたい。