<金口木舌>「後出しじゃんけん」の是非


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 人間相手にじゃんけんで必ず勝つロボットをご存じだろうか。東大大学院情報理工学系研究科の石川正俊教授らが開発し、動画サイトが話題を呼んだ

▼相手の手の動きを瞬時に把握して千分の1秒だけ「後出し」するが、人間の目では分からない。映像を見ると確かに百戦百勝。正式名称は「勝率100%のじゃんけんロボット」だ
▼人間との協調作業への応用も期待されるという先端技術の「後出し」には感嘆するが、これが政治の世界の話になると、どうだろう。選挙で知名度の高い候補者がぎりぎりまで出馬表明を遅らせようとする現象のことだ
▼野田佳彦首相が衆院解散総選挙の意向を固め政局は風雲急を告げているが、同時平行して石原慎太郎氏の辞職に伴う都知事選も29日告示、来月16日投開票の日程で行われる。候補者選びは大詰めだが、出馬が取りざたされる複数の有力者がまだ態度を明らかにしていない
▼できるだけ告示直前に態度表明し、鮮度を維持して選挙戦に突入したいからだとされる。水面下での政党間の思惑も絡む。選挙戦術としてすっかり定着した感があるが、本当は卑劣と言われても仕方のない手法ではないのか
▼イメージ型選挙の隆盛を不快に思う有権者も少なくないはずだ。じゃんけんでは本来「後出し」はルール違反。正々堂々とした候補者の議論を見極め、判断する力を持ちたい。