<金口木舌>進む北極海の氷減少


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 沖縄はいくら冷え込んでも氷が張るようなことはまずない。氷ができたり解けたりすることに県民は通常、関心がない。だが北極で急加速する氷の減少となると話は別か

▼東京海洋大の島田浩二准教授らの研究チームは、北極海で海水の熱量が1990年代の約3・25倍にもなり、温暖化した海域が拡大していることを突き止めた。それが海氷面積の激減につながった可能性がある
▼今年、北極海の海氷面積は80年代の半分以下に減った。宇宙航空研究開発機構は9月、海氷面積は349万平方キロで過去最小になったと発表。これまでで最小だった2007年から日本列島二つ分も小さくなった
▼一度氷がなくなった海は太陽光を吸収しやすい。太陽光が海に注いで海水が温められ、氷減少の悪循環が始まっているとも聞く。人類はまさに薄氷を踏む思いで事態を深刻に受け止める必要がある
▼北極海の氷の減少は海面上昇という地球規模の弊害をもたらし、沖縄にも影響は及ぶ。最近、大型で猛烈な台風がしばしば直撃する。大潮の時に台風が接近すると高潮が起こる。海面上昇で高潮の脅威は増す
▼温暖化対策で各国の連携が進まないのを横目に、自然は人類の想像を超えた速さで変化する。しかし人類にも最悪事態を想像し回避する知恵がある。省エネなど温暖化に歯止めをかける取り組みを身の回りから強化したい。