<金口木舌>まつりの力


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 年に1度の晴れ舞台は演じる人、見る人の思いや願いであふれる。それぞれの人模様が全島エイサーまつりを今年も鮮やかに織り成した

▼沖縄市松本の川井田一馬さん(37)は13年前、休眠状態の松本青年会を復活させた。疲弊しかねない地域の活路を青年会の再起に求めた。当初3人だったが、今年は60人の若者が舞った。地域のために注いだ努力の結実に頭が下がる。父の背中を見て育った2人の子が青年会活動に励む姿も頼もしい
▼この日のために進学先の大阪から帰省した若者もいた。國吉雄大さん(17)は地元の安慶田青年会に飛び込み、先輩たちの教えを受けて臨んだ。故郷のぬくもりに触れ「大阪でもまた頑張れる」と気合が入った
▼車いすで演舞を見詰めた外間友果さん(23)=恩納村=は後遺症の治療中。病院の許可を得て会場を訪れた。「来年はやってみたい。できれば太鼓」。同世代が力強く、そして華麗に舞う姿に確かな気力をもらった
▼土師ひかりちゃん(7)は初めてのエイサーにはしゃぎっ放しだった。福岡県から県内の病院に入院中。「太鼓の音が胸に響いてすごい」。躍動する若者たちの姿に触発されて「やってみたい」と瞳を輝かせた
▼多くの人が集い、力を分け合い、刺激し合う。まつりにはそんな側面もある。まつりを通して、それぞれの人生が豊かに実ることを願う。