<社説>石垣・竹富通信途絶 人命に関わる重大事態だ


社会
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 人命に関わりかねない重大な事態が、石垣市と竹富町で発生した。

 台風18号が接近した9月30日夜から1日朝まで、約11時間にわたって両市町全域の通信が途絶したのである。固定電話、携帯電話、インターネットが使えなくなった。暴風の中、住民は110番通報も119番通報もできない状況に陥った。
 もしも、一刻を争う急病人やけが人が出ていたら、取り返しのつかない事態になっていたかもしれない。
 石垣市、竹富町の人口は合わせて約5万4千人。滞在中の観光客やビジネスマンを含め、全ての人が半日近くもコミュニケーションの手段を奪われた。その危険性と不便さは察するに余りある。
 県内をループ状に結んだ通信回線の2カ所が損傷したことによって、損傷区間に挟まれた石垣市と竹富町が通信的に孤立したのだという。情報を受け取れず、発信もできない「孤島」と化してしまった。
 電話は生活に必要不可欠なライフラインだ。通信ができなくなる事態はあってはならない。電気通信業務を担うNTT西日本は、二度と通信途絶が起きないように二重、三重の対策を講じるべきだ。情報通信を所管する総務省の責任も問われてこよう。
 通信障害を受け、石垣市は救急対応などのため消防車両を巡回させた。八重山警察署は署員総出で市民への対応を強化した。石垣空港では停電の影響も加わり、発券や搭乗手続きができず、空港機能が停止した。気象庁と石垣島地方気象台との通信も不通になった。石垣市にある竹富町役場は、各島の出張所との情報のやりとりが途絶えた。
 行政機関の側も関係要路との通信手段として衛星携帯電話を拡充するなど、自衛策を検討する必要がある。
 通常であれば、石垣市と宮古島市を結ぶ回線が駄目になっても、与那国町からのルートで通信が確保できる。今回は与那国町と竹富町を結ぶケーブルが9月28日に損傷していた。そのさなか、台風の飛来物によって石垣市のケーブルが損傷し、両方の回線が遮断される事態になった。
 石垣市での回線損傷は飛来物によって起きたが、与那国町の損傷は台風に起因するものではない。なぜ回線が使えなくなったのか、原因を明らかにしてほしい。
 その上で、問題点を洗い出し、抜本的な解決策を講じなければ、再び同じことが起きるだろう。今回、白日の下にさらされた通信インフラの脆弱(ぜいじゃく)さは、何をおいても克服しなければならない。
 事業者のNTT西日本に求められるのは、通信回線の保守点検を徹底することだ。損傷した場合にも、速やかに復旧させる仕組みを構築することが急務だ。
 通信の途絶は地域で暮らす人々にとって死活問題である。そのことをよく肝に銘じるべきだ。