<社説>台風19号大雨被害 被災者の生活再建急務だ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東日本を襲った台風19号の大雨被害は16日午後までに死者が76人に上った。全容はいまだ見えない。行方不明者の捜索と併せ、被災者の支援と一日も早い生活再建に全力を挙げなければならない。政府は最優先で取り組むべきだ。

 今回の災害は広い範囲で河川の氾濫が相次いだことが特徴だ。被害はあまりにも大きく、全体像を把握するのも容易ではない。
 長野県の千曲川や福島、宮城両県を流れる阿武隈川など7県の59河川90カ所で堤防が決壊した。
 堤防が決壊した河川には、本流の水量が増し、支流からの水がせき止められてあふれ出したケース、下流で川幅が狭くなり、流量が少なくなって上流の水位が上昇したケースがあるという。
 河川の水が逆流しあふれるような事態を「バックウオーター現象」と呼ぶ。四方を海で囲まれた沖縄でも人ごとではない。満潮時と大雨が重なれば、県内でも起こり得る現象である。自治体などが早急に点検し、事前の備えをしっかり取りたい。
 今回の災害では、福島、宮城両県で死者が42人に上るなど半数を超える。河川の氾濫や堤防の決壊で浸水し、溺死した人が多い。特に高齢者の犠牲が目立つ。災害弱者の対応にどう万全を期すか。あらためて対策を綿密に練り直したい。
 災害弱者に対する課題はほかにも浮上した。台風19号が首都圏を直撃した12日、東京都台東区が自主避難所に身を寄せようとした路上生活者(ホームレス)2人の利用を断っていたことが判明した。
 同区が開設した自主避難所の小学校を訪れた2人に住所や名前を書くよう促したところ、「住所がない」と話したため「区民を対象としており、それ以外の人は受け入れられない」と断ったという。
 命の危険が差し迫っている中で、人道にもとる対応だ。住所のない外国人観光客らはどこに救いを求めればいいのか。対応を改めるべきだ。
 政治家による心ない発言もあった。自民党の二階俊博幹事長は、台風19号の被害について「まずまずに収まった」と発言し、後に撤回した。被害の全容も明らかにならない中での発言である。被災した人たちへの思いやりの心が欠如している。政治家としての資質を欠くとしか言いようがない。
 地球温暖化に伴う海水温の上昇が要因とみられる気象災害の発生は今後も懸念される。台風の直撃を毎年受ける県内からは台風対策の情報が次々と発信された。
 インターネットを介して県民の経験をシェアしようと取り組まれたという。「携帯フル充電」「調理不要の食料と水を準備」など、身近でできる対策を分かりやすく伝えた。
 こうした経験や知見を総動員して、今後も想定を超える未知の災害に備えることが何よりも肝要だ。