<社説>沖縄大使の発言 職責放棄にしか映らない

 日本国内で起きた事故にもかかわらず、日本の法律よりも米国法が優先される。これを日米地位協定によるものと言わずして何と言おう。

 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが2016年に名護市安部の沿岸部に墜落した事故で、米側が米国内のプライバシー保護法を理由に操縦士らの氏名提供を拒んでいた。外務省の川村裕沖縄担当大使が県議会の要請団に明らかにした。
 川村大使は「(日米)地位協定が捜査の障害になったとは認識していない」と述べた。外務省の公式見解だという。自己矛盾していることに大使も外務省も気付かないのか。それとも強弁することで矛盾
を覆い隠そうとしているのか。
 オスプレイが墜落したのは16年12月13日夜。米軍はすぐに現場に規制線を張り、日本側を立ち入らせなかった。米軍が協力を拒んだため、海上保安庁は現場検証や操縦士の事情聴取など通常の捜査はできず、容疑者を特定することさえできなかった。
 米軍の行動は地位協定で日本の国内法適用が免除される。米軍が公務中に起こした事故は、日米地位協定で米側が1次裁判権を有することが定められている。それが日本側の捜査を実質的に妨げている。05年に日米が合意した運用改善で航空機事故では日米双方で事故現場を管理するとされたが、現実には日本の捜査機関は現場に入ることすら米側の許可がいる。
 この事故では米側が「困難な気象条件下で空中給油訓練を行った際の操縦士のミス」と結論づけた。それなのにミスをした操縦士が誰なのか分からない。日本政府は米側の報告書を追認するだけだ。海保は最終的に今月、被疑者不詳で書類送検した。
 県議会は、事故の捜査が十分にできなかったのは「不平等な地位協定に起因する」として地位協定の抜本的な改定を求める意見書を全会一致で可決した。与野党が一致した要求で、県民の総意と言ってもよい。
 沖縄大使の主な任務は在沖米軍に関わる事項について県民の意見を聞いて外務省本省に伝えるとともに、必要に応じて米軍等と連絡・調整を行うことだ。地位協定は捜査の障害になっていないと県議会の要求をはねつける姿勢は、職責を放棄しているとしか思えない。県議団が反発して撤回を求めたのも当然だ。
 日米地位協定は米側の都合を優先させ、日本側にとって不平等であることは、イタリアやドイツが米国と結んでいる地位協定と比較しても明らかだ。米軍からプライバシー保護で情報提供できないと言われ、唯々諾々と従ったこと自体問題だ。沖縄大使は地位協定の改定どころか、その不平等性を強化する役割を担っていると言わざるを得ない。
 米軍の特権が捜査の壁になっている現実から目を背けることは許されない。



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