<社説>産業まつりが開幕 未来つくる県産品実感を


社会
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 第43回沖縄の産業まつりが25日から那覇市の奥武山公園と県立武道館で開幕した。27日まで。今年のテーマは「うちなーの未来をつくる県産品」。490の企業・団体が参加、精魂込めてつくり上げた製品を展示している。足を運んでその良さを実感したい。

 産業まつりは事業者の生産意欲の高揚、消費者の意識啓発、製品の開発と品質向上、市場拡大などを目的とする県内最大の産業イベントである。
 残念ながら、県内製造業はリーディング産業の観光などに比べ、まだまだ脆弱(ぜいじゃく)だ。
 県工業連合会と琉球大学が昨年発表した県工業製品の県内自給率調査によると、県内需要に対する供給割合を示す自給率(2011年)は全産業で73・7%。このうち製造業は32・1%にとどまる。
 製造業の自給率が3ポイント伸びれば509億1100万円の経済波及効果を生み出し、5556人の雇用を誘発するという。6ポイント上昇したときの経済波及効果は1101億1800万円に達し、1万2017人の雇用を創出すると試算されている。
 県経済のさらなる活性化のためには、製造業の自給率を高めることが極めて重要だ。多くの人が県産品を愛用するようになれば、地場産業の振興・発展を促し、所得水準の向上にもつながる。
 まずは優れた製品を数多く生み出すことが何よりも大切だ。その上で、県産品の良さを広く一般に周知させなければならない。産業まつりは、新商品を内外にアピールするまたとない機会だ。
 展示内容は、食料品、健康食品、泡盛、化粧品、建設資材、EV自動車など、多岐にわたる。海洋資源産業の現状や研究成果を紹介する「海洋産業展」は見どころの一つ。水中ロボットの操縦体験コーナーも設けている。「ありんくりん市」では県内各地の特産品を展示、販売する。
 産業まつりは1977年、当時の平良幸市知事が提唱し初めて開催された。今やその頃とは比べものにならないほど規模が拡大し、出展される県産品の品質は格段に向上している。関係者の不断の努力のたまものだ。
 県内の製造業を飛躍的に発展させるには、誰もが欲しがる良質な製品を造り続ける以外にない。
 いくら県産品の愛用を呼び掛けたところで、中身が乏しければ購買意欲は高まらないからだ。それぞれの企業は日頃から創意工夫に努め、消費者のニーズを的確にとらえる必要がある。
 産業まつり実行委員会会長の古波津昇県工連会長が開場式で述べたように、まつりは人と人、人と産業をつなぐ貴重な機会であり、沖縄の産業を元気づける催しだ。
 生産者にとっては、消費者とじかに触れ合い、製品に対する反応を確かめる場でもある。訪れた消費者は、県産品への認識を新たにすることだろう。その意義は大きい。