<社説>経産相辞任 逃げずに説明責任果たせ


社会
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 また「政治とカネ」の問題が噴出した。

 選挙区の有権者に秘書が香典を渡していた問題で、菅原一秀経済産業相が辞任した。就任わずか1カ月半での事実上の更迭だ。菅原氏は過去に地元の有権者にメロンやカニを贈ったとする公職選挙法違反の疑惑で国会で追及されていた。
 安倍政権での「政治とカネ」による辞任は第2次政権以降、5人目だ。安倍晋三首相は「任命責任は私にあり、国民に深くおわびする」と述べたが、こうも繰り返されては、口先だけにしか聞こえない。
 菅原氏は一連の疑惑について、国会など公の場で説明した上で議員辞職すべきだ。公人なのだから逃げることは許されない。安倍首相の責任はもちろん、初入閣を後押しした菅義偉官房長官の責任も問われる。
 安倍政権下ではこれまでにも、選挙区の有権者を観劇会に招くなどした小渕優子経産相、うちわを配った松島みどり法相、補助金支給が決まった企業からの献金問題で西川公也農相、建設会社からの金銭授受で甘利明経済再生担当相がいずれも辞任に追い込まれた。
 これほど繰り返されながら、政治とカネの問題がやまないのはなぜか。
 公選法は政治家が選挙区内で金品を提供する行為を禁じている。現金はもちろん、食事の提供、旅行への招待などあらゆるものが対象になり、違反すれば50万円以下の罰金が科せられる。
 しかし議員本人の関与などを立証するのは難しく、刑事責任を問われることは少ない。2018年に茂木敏充経済再生担当相や秘書が選挙区の有権者に線香などを配った問題で、茂木氏は配ったのは秘書で「自分の氏名は記載されていない」と説明した。小渕氏や松島氏も含め、刑事責任を問われていない。秘書への指示などを立証するのは難しいからだ。
 菅原氏の場合、元秘書が証言したメロンやカニの贈呈は3年の公訴時効を過ぎている可能性がある。公選法は金品提供の例外として、議員本人が出席して私費で香典を出すことは認めているが、秘書が出すのは寄付行為に当たる。菅原氏は自身が通夜に出席する予定だったが公務の都合で秘書が行ったと説明する。
 こうした説明で公選法違反を免れるとすれば、法自体に抜け道が多いとしか言いようがない。ましてや菅原氏は国会でメロンやカニの贈答を追及されていたさなかだ。閣僚を辞任したからといって、幕引きとはならない。
 安倍政権では、疑惑を追及されると役職を辞めて検証を免れ、その後復権するケースも繰り返される。甘利氏は説明責任を果たさないまま、先月から自民党税制調査会長の重責を担う。だから政治とカネの問題が繰り返されるのだ。安倍政権には自浄作用がない。