<社説>絶滅危惧種の盗難 悪質な犯行根絶は急務だ

 沖縄市の動物園「沖縄こどもの国」で、国指定天然記念物で絶滅危惧種のリュウキュウヤマガメ15匹やセマルハコガメ49匹が行方不明になった。10月28日に気付いたが、盗難の可能性が高いとして沖縄署に被害届を提出したのは今月6日になってからだ。

 園によると、亀の数が少ないことに飼育員が気付き、点検したところ飼育していた展示場のネットを結束するバンドが数カ所外れていた。付近に防犯カメラはあったが、展示場周辺の様子は樹木で隠れて撮影されていなかった。
 園が環境省沖縄奄美自然環境事務所に通報したのは覚知から3日後の10月31日だ。あまりに遅い。
 昨年9月にもリュウキュウヤマガメとセマルハコガメの行方が分からなくなっていたが、警察に被害届を出していなかった。同一犯の仕業だったとすると、この時に被害を届け出なかったことが新たな盗難につながった可能性がある。亀を持ち去っても気付かれることはない―という印象を与えてしまうからだ。
 沖縄こどもの国では今年6月にヤクシマザル14匹が園外に逃げ出す騒動があったばかりだ。野生動物の飼育管理に不備はないのか改めて厳重な点検が求められる。
 もちろん、悪いのは希少動物を盗み出す者だ。リュウキュウヤマガメやセマルハコガメは海外で人気が高く、インターネットを通じた売買が横行している。昨年10月にリュウキュウヤマガメ60匹を密輸しようとした日本人男性が香港の空港で逮捕されている。
 絶滅の恐れがある生物を売買目的で盗んだり、密猟したりするのは、沖縄固有の自然環境の破壊につながる許されない行為だ。絶滅危惧種と知りながら購入する行為も同じだ。断固として根絶しなければならない。
 動植物の持ち出しを水際で阻止し、密輸者を早期に摘発するには、税関など行政機関はもちろんのこと、航空・船舶、宅配といった民間事業者との連携が重要だ。それだけに通報や公表の遅れは致命的な初動のつまずきとなる。
 動物園には、野生動物の保護と計画的な繁殖により、将来にわたって種を保存するという使命がある。絶滅危惧種の亀が複数回も不明になるのでは、動物園の存在意義を問われる。
 沖縄固有の動植物を密猟や開発から守る「県希少野生動植物保護条例」が県議会9月定例会で可決された。2020年11月に全面施行される。奄美・沖縄の世界自然遺産登録に向かう中で、希少種を保護する体制を今まで以上に強めていかなければならない。
 そのためにも、こどもの国による管理体制の問題点を徹底検証すべきだ。盗まれた亀の捜査には海外にまで広がる売買ルートの把握が不可欠となろう。県警は種の保存を脅かし生態系を破壊する重大な犯罪と受け止め、実態解明に全力を挙げてほしい。









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