<社説>香港民主派が圧勝 強権姿勢を改めるべきだ


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 明白な民意が香港の区議会(地方議会)選挙で示された。中国政府は住民の意思を重く受け止め強権で抑え付ける姿勢を直ちに改めるべきだ。

 24日に行われた香港の区議会選は、香港政府に批判的な民主派が8割を超える議席を獲得して圧勝した。民主派が過半数を獲得したのは1997年に香港が中国へ返還されて以降初めてだ。
 区議会に立法権はなく、地域の問題について政府へ提言する諮問機関的な役割を担うにとどまる。今回投票が行われた直接投票枠(452議席)は民意を反映しやすい仕組みといわれる。これに対し香港のトップである行政長官は業界団体の代表らによる制限選挙で、任命者が中国政府だ。
 香港基本法(憲法に相当)は将来的には1人1票を認める普通選挙にすると定めている。民意が反映されない仕組みを抜本的に改めることが不可欠だ。基本法に従い、行政長官や立法会議員の選挙に普通選挙を導入しない限り、混乱は収まらないだろう。
 今回の区議選は、6月に抗議活動が本格化して以後、初の香港全域での選挙だ。投票率も前回を20ポイント以上も上回り、返還後では最高の71・2%に達した。結果は香港の民意と言って差し支えない。
 「逃亡犯条例」の改正案に反対するデモが始まって5カ月余り。犯罪の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする条例の改正案は10月に撤回された。
 しかし香港政府はこの間もデモを抑え込もうと参加者のマスク着用を禁じる「覆面禁止法」を制定している。集会や表現の自由を脅かす法律だ。
 同法の制定過程は強引なものだった。行政長官が緊急時に立法会(議会)の手続きを経ずに必要な規制を設けられる「緊急状況規則条例」を発動した末の産物である。適正な立法の手続きを踏んだとは到底言えない。
 香港の高等裁判所に当たる高等法務院も香港基本法に違反しているとの判断を示した。合理的な範囲を超えて市民の基本的権利を制限していると認定したのである。
 判決に対し中国政府は、香港基本法の解釈権を持つ「全国人民代表大会常務委員会の権威への挑戦」と批判し、強硬な姿勢を崩さない。
 英国から中国へ主権が返還されて22年。中国の特別行政区となった香港は「高度の自治」が保障されてきた。香港基本法は言論や集会の自由を認め、司法制度も独自の司法権が確立されている。
 こうした自由、自治、法治が条例改正などにより、ゆがめられかねない事態である。人々が中国化に警戒感を持つのは当然の帰結だ。取りも直さず、原因は香港政府と、背後にいる中国政府にある。
 力による介入は、住民の反発を増幅させ、混乱に拍車をかけるだけだ。香港政府、そして中国政府は「一国二制度」の原点に立ち返り、民意と真(しん)摯(し)に向き合うべきだ。