<社説>「ながら運転」厳罰化 危険な行為を一掃したい


社会
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 スマートフォンなどを使用しながら車を走行させる「ながら運転」について、違反点数と反則金を引き上げ、懲役刑も重くするなど厳罰化した改正道路交通法が施行された。

 運転中に携帯電話を操作したり、カーナビの画面を注視したりするのは、ついうっかりしてしまいがちな行為だ。実際、スマホをのぞき込んでいるドライバーの姿を見ることもある。しかし時速60キロで運転していた場合、スマホ画面をわずか2秒直視する間に自動車は約33メートル進むという。
 私たちは「走る凶器」を操っているという自覚を強く持ち、ながら運転を撲滅させなければならない。
 ながら運転の厳罰化は交通事故の遺族による運動の広がりも背景にある。
 携帯電話が急速に普及した1999年、ながら運転の罰則規定が改正道交法に初めて盛り込まれた。当初は通話中などに交通の危険を生じさせた場合だけが処罰対象だったが、2004年の法改正で通話自体にも拡大した。
 しかし16年に愛知県でスマホゲームをしながら運転していた男のトラックにはねられ小学4年男児が死亡した。18年には、新潟県で漫画をスマホで読みながらワゴン車を運転していた男が死亡事故を起こした。
 18年の調査では携帯電話の使用などに起因する死亡事故は、携帯電話を使っていなかった場合の2・1倍に上った。事故が引き起こした悲劇を考えると、ついうっかりでは済まされない。
 県内でも、ながら運転事故は増加している。携帯電話使用等(画像注視・保持)による人身事故は09年には4件だったが18年には23件と増えた。そのうち8割以上の19件は走行中に携帯の画面をのぞき込む画像注視だった。
 改正法で、運転中の携帯電話での通話や画面を注視する違反「携帯電話使用等(保持)」の点数をこれまでの1点から3点に引き上げた。通話や注視により交通の危険を生じさせる違反をすると免許停止される6点になる。新たに懲役刑を加え、違反を繰り返すと「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」が適用される可能性がある。携帯電話を使用したため「交通の危険」を起こすと「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」に罰則が引き上げられた。
 いずれも走行中に手に持ち、通話するといった行為が対象だ。車を安全な場所に停止した上での通話やスマホ、カーナビの使用は取り締まりの対象とはならない。安全な使用は個々人の心掛けでできる。
 ながら運転については、運転中はスマホをロックし使用できなくするシステムなども開発されている。社有車が多い運送業などを対象にサービスを開始する予定だという。
 安全運転への意識を高めるとともに、技術を活用し、社会全体で交通事故をなくす取り組みを進めたい。