<社説>琉球新報教育賞 次代育む営み共有したい


社会
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 尽きることのない教育の探究に専心する教諭5氏に第5回琉球新報教育賞がきょう贈られる。次代を担う子どもを教え育てていく営みの大切さをこの機会に共有したい。

 那覇市立石田中の宮城真由美教諭は英語教育の重点をコミュニケーション力の養成に置く。「言葉が相手に伝わるとどれだけうれしいか」。グローバルな社会へ船出する次代の生徒に英語の力がますます重要になると説く。
 子どもたちに興味を持たせるため、人気ロックバンドが東日本大震災を受けて制作したとされる曲を取り入れたのも一つの工夫だ。「授業改善アドバイザー」として校内外で授業力向上に努める。
 名護市立大宮小の仲本亜紀乃教諭は、マーチングバンド部や吹奏楽部を九州大会、全国大会へと導いている。児童と共に「楽しむこと」を重視し「音楽は心」が信条だ。子どもの内面に気を配り、いい演奏のためにも音楽を楽しむ環境づくりに力を尽くす。
 児童の自主性を重んじる練習スタイルが演奏の際に、自ら考え、発案する力にもつながるという。教諭と生徒の創造力がオリジナル作品をつくり上げている。
 フラワーデザイン指導者の第一人者として教壇に立つのは南部農林高の又吉さきえ教諭だ。生徒には「養ってほしいのは美的感覚と広い視野」と話す。デザインを通して細かな気配り、さまざまな視点の捉え方を生徒は学ぶ。
 自ら研修会などに参加し、先進的な技術の習得にも余念がない。「作りたいと思ったものを形にする」。デザインの奥深さを伝えるため、授業以外でも生徒の指導に力を入れている。
 指導の方法は日進月歩だ。社会科の授業の改善に向けて琉球大付属中の中村謙太教諭は日々思考を巡らす。どうすれば関心を持ってもらえ、どう問い掛けたら興味をわかせることができるのか。
 社会科教諭が集う県中学校社会科教育研究会で事務局長を務める。研究会では、そんな悩みや生徒との向き合い方も共有する。「自分も周囲の人もどうやったら幸せになれるか」。社会科授業の理想を追い求め、歩みを進める。
 宜野湾高の喜屋武忠教諭はこれまで赴任してきた高校で映画研究部を創部してきた。県内外の放送コンテストで上位入賞を勝ち取ってきた。
 8分間の映像作品に要する制作期間は約3カ月間という。個性の異なる生徒を結び、作品完成のゴールに向け情熱を傾注する。他者の心情をくみ取ることなくしてはできない作業と言える。「部活は小さな社会のようだ」と言う通り、それぞれの役割をこなすことで生徒は社会を学んでいる。
 地道に真(しん)摯(し)に子どもたちと向き合い、創意工夫を凝らした授業や意欲的な研究を続けている教諭に光を当てる。琉球新報教育賞の趣旨である。教育現場でまさにそれを実践する5氏をたたえたい。