<社説>桜を見る会巡る疑惑 不問に付してはならない


社会
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 これほど誠意を欠いた政権がかつてあっただろうか。桜を見る会を巡る政府の対応は国民を愚弄(ぐろう)している。

 臨時国会が召集されて間もなく、安倍晋三首相は、こう宣言した。「野党からも謙虚で丁寧な首相と言ってもらえるよう、努力を重ねる」
 口先だけだったことはその後の展開を見ればはっきりする。野党が求める予算委員会の集中審議を与党は拒否した。会期延長にも応じず、結局、何一つ説明責任を果たさないまま、臨時国会は閉幕した。
 2014年に約1万3700人だった桜を見る会の出席者が今年は約1万8200人に達した。各界で功績や功労のあった人などを慰労する催しに、安倍首相の後援会関係者が多数出席していた。国費で接待したことになる。
 預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」元会長が首相推薦枠で招かれた疑いがある。反社会的勢力と指摘される人物まで出席したとみられている。
 14年に約3千万円だった支出も今年は約5500万円に増えた。全て国民の税金だ。適正だとは思えない。会計検査院は厳格に検査すべきだ。
 だが、招待者の名簿は共産党議員が関連資料の提出を求めた日に破棄された。不適切な実態を隠蔽(いんぺい)するためとしか考えられない。
 首相は臨時国会の閉幕後の会見で、桜を見る会の全般的な見直しを自身の責任で行う考えを表明した。
 肝心の招待者の名簿が廃棄されているのに、どうやって見直しができるのか。支離滅裂としか言いようがない。
 菅義偉官房長官は、名簿が残っていないか改めて調査するかを会見で問われ「紙も電子データも全て削除していると報告を受けており、新たな調査を行うことは考えていない」と述べた。国民の疑問に背を向けているようにしか見えない。
 小泉政権が2001年に国会議員への文書提供に関する答弁を閣議決定している。「行政文書として存在しない場合であっても、必要に応じ要求内容に沿った資料を新たに作成して提供することがある」とする。この政府見解に照らせば、招待者名簿は当然復元されるべきものだ。
 天皇・皇后主催の園遊会は各界の功績者約2千人が招かれる。宮内庁は招待者を公表し名簿を30年保存している。功労者などとして桜を見る会に招待された人たちを非公開にする理由は全くない。
 首相は、憲法改正について「必ずや私の手で成し遂げていきたい」と表明した。不正が疑われる政権に国の最高法規の改正を論じる資格があるとは思えない。数々の疑惑に対し、根拠を示し、説明をするのが先決だ。
 「前夜祭」を含め、さまざまな問題が一切解明されないまま不問に付されるなら権力を握った者は何をしても許されることになってしまう。国民の規範意識が問われている。