<社説>最新旅客機生産停止 乗客乗員の安全最優先に


社会
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 米航空機大手ボーイングが最新鋭機「737MAX」の生産停止を発表した。米連邦航空局(FAA)からの安全性の承認取得が遅れているためだ。

 何よりも優先されるべきなのは乗客乗員の安全である。それが確保されない以上、生産停止は当然の帰結だ。2度の墜落事故で346人もの犠牲を出したのだから、十分に時間をかけて審査する必要がある。
 昨年10月のインドネシアの事故では乗客乗員189人が死亡した。事故原因について同国の国家運輸安全委員会が、10月に最終調査報告書の概要を発表した。原因の一つに挙げられたのが自動失速防止装置の設計に欠陥があったことだ。
 自動失速防止装置は飛行中に機首が上がり過ぎて失速するのを防ぐために自動的に機首を下げるシステムだ。事故では、このシステムが誤作動して機首が下がり、操縦士が立て直せなかったことが分かっている。
 今年3月にはエチオピアでも墜落事故が発生した。157人が死亡している。インドネシアでの事故と同様、離陸直後に墜落した。
 エチオピア運輸省の暫定的な調査でも同様に自動失速防止装置の誤作動が疑われ、ボーイングも装置が誤作動したことを認めている。
 いずれの墜落事故についても見逃せないのは未然に防げた可能性が否定できないことだ。10月の米上院商業科学運輸委員会の公聴会では、ボーイング所属の操縦士が2016年の段階で737MAXに欠陥があることを認識していたことが明らかになった。
 操縦士は同僚に自動失速防止装置の誤作動を指摘するメッセージを送っている。その中には装置が「シミュレーターの中で暴れている」と記載していた。
 ボーイングも公聴会の数カ月前に、このメッセージを把握したにもかかわらず、10月中旬に至るまで米航空当局に報告していなかったという。都合の悪い事実を隠していたと疑われても仕方がない。
 墜落事故で多大な命が失われた。ひとたび起きてしまえば大惨事に直結しかねないのが航空機事故だ。事前に把握できた重大な危険の兆候をくみ取れなかった責任は重大である。自らの製造物に対する責任をどう考えているのか。
 国内ではANAホールディングスが2021年度以降、国内線を中心に、737の700型、800型の後継として、30機を導入する計画だ。これらの型は現在、沖縄路線にも就航している。生産停止の発表後、ANA側は「事実関係や(運航などへの)影響についてボーイングに確認する」とコメントした。
 航空便は島嶼(とうしょ)県の沖縄にとって、欠かせない公共交通であり、ライフラインである。空の安全を守るには慎重の上にも慎重を期す姿勢が求められる。