<社説>入試記述式見送り 制度設計が間違っている

 50万人分を超える答案を20日間で採点する。中には想定外の解答も出てくる。作業に当たるのは学生アルバイトを含む8千~1万人だ。出題者の意図を正しく理解し、完全な同一基準で公平に点数を付けるなど、およそ不可能だ。

 2020年度開始の大学入学共通テストは、国語と数学の記述式問題の導入が見送られた。採点ミスへの懸念や受験生による自己採点の困難さといった課題が解決できないためだ。
 共通テストでは、英語民間検定試験の活用も見送られている。大学入試改革の目玉がそろってなくなった。
 導入を事実上断念した萩生田光一文部科学相の判断は当然だが、遅きに失した印象は否めない。
 そもそも、専門的な知見が不可欠な入試制度を、政治主導で改めようとしたことが大きな間違いだった。
 採点者でさえぶれが避けられないのだから、自己採点と実際の点数に食い違いが生じるのは必然だ。受験生は、出願先を適切に選択できなくなってしまう。
 しかも、採点の業務は民間の業者が請け負っている。体制面にとどまらず、秘密の保持という点でも不安はぬぐえない。
 文部科学省の中では、早くから採点ミスの発生を予想し、合否判定のやり直しも視野に入れていたという。
 トラブルが起きると分かっていながら、なぜ土壇場まで判断を先延ばししたのか。このまま実施に踏み切れば、不当な採点をされた受験生に甚大な不利益を与える恐れがあった。やむを得ないと考えていたのだとすれば、あまりにも無責任だ。
 記述式を導入する狙いは、知識偏重から転換し、「思考力・判断力・表現力」を測ることにある。国語では長いもので80~120字程度が上限で、数学は数式などを記述させる予定だった。
 だが、採点のしやすさに力点を置いて作問すれば、所期の目的である「思考力・判断力・表現力」が問いにくくなってしまう。
 数十万人が受験する共通テストの枠組みの中で、自らの力で考えをまとめたり論述したりする力を、採点ミスもなく公正に評価する方法があるとは考えにくい。制度設計に大きな欠陥があった。
 萩生田文科相は記述式を改めて導入する可能性について「期限を区切った延期ではない。まっさらな状態から対応したい」と述べている。
 まずは問題の作成、採点といった実務を熟知した有識者から、十分に意見を聞くことから始めた方がいい。思考力、表現力などは2次試験で評価するのが現実的だろう。
 大学入試の結果は、人生の進路にも大きく影響を及ぼす。受験生や学校に大きな混乱をもたらした罪は重い。政府は、この間の経緯をつぶさに検証し、責任の所在を明確にすべきだ。



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