<社説>20年沖縄経済展望 新たな段階へ飛躍の年に


社会
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 2020年、沖縄経済は新たな時代を迎える。那覇空港の第2滑走路の利用が3月26日に開始され、人や物が行き交う沖縄の玄関口が大きく広がる。足元では拡大を続けてきた景気が踊り場に差し掛かっており、沖縄を次のステージへと飛躍させるための発展の戦略が求められる。

 2010年代の沖縄経済は、リーマン・ショック後の大幅な景気後退から抜け出し、大都市圏と肩を並べるレベルの活況が続いた。日本全体が人口減少の段階に入ったのに対して沖縄は人口増が続いていることと、外国人客を中心とした観光客の急増が経済の拡大をけん引した。
 人が集まる沖縄に、世界的なホテルブランドをはじめ大型商業施設、マンション、物流施設の建設など、国内外から投資が相次いだ。沖縄を訪れる観光客の数はついに1千万人を突破し、地価上昇率は全国一である。
 今年も県経済はこの基調が続くはずだが、潮流の変化が各所に出てくるだろう。
 日本銀行の県内企業短期経済観測調査(短観、全産業)で、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は31四半期連続でプラスが続いている。ただ、直近ではプラス幅が縮まる傾向があり、最新の12月調査は4年半ぶりにプラス30を下回る水準となった。
 全国的に景気が「良い」と答える企業の数が減少する中で、沖縄の景況感はまだ高い水準と言える。しかし、日本経済全体の好不況の波に沖縄経済が左右される構造を脱したわけではない。
 国内の景気回復は消費税増税以降の減速感を抱える中で年を越した。米中貿易摩擦の先行きは不透明さが残り、東京五輪が終了した後の経済動向は予断を許さない。
 県内では、地価の高騰や競争激化による企業収益の圧迫など、好景気の反動が表れてきている。沖縄観光のシンボルでもあった首里城の焼失を踏まえ、観光振興策の構築を迫られている。県経済の足腰が試される正念場だ。
 デジタル化、グローバル化という時代の変化は早い。取り巻く環境の変化にいかに機敏に対応していくかが一層問われる年となる。そして、10年後の2030年、30年後の2050年にどんな沖縄を目指すのか、中長期の目標を県民全体で共有しやすい区切りのいい年でもある。
 求められる視点の一つに、数の拡大から質への転換がある。年内の世界自然遺産登録が視野に入る中で、環境と調和した持続可能な開発、住民生活を尊重した持続可能な観光地づくりが重要だ。
 全国の2倍という失業率が改善するなど、雇用情勢が好転してきた。この動きをさらに働く人の所得向上につなげ、全国最下位の県民所得を確実に押し上げることが次のステージの成果指標となる。
 県民が生活の豊かさを実感できる経済成長に向け、挑戦を始める年としたい。