<社説>下地氏に100万円 裏金受領したなら辞職を


社会
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 またもや政治と金を巡る疑惑が表面化した。100万円もの大金を事務所が受領したにもかかわらず、報告を受けたかどうか「覚えていない」と言う。政治資金の管理のずさんさには驚くほかない。

 日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で県関係議員の疑惑が浮上した。贈賄容疑で逮捕された中国企業「500ドットコム」の元顧問らが5人の議員に現金各100万円を渡したとの供述が発端だ。
 5人のうちの1人、元郵政民営化担当相で、日本維新の会衆院議員の下地幹郎氏=比例九州=が、2017年10月の衆院選期間中に、「500」社元顧問から現金100万円を受領したと認めた。
 下地氏によると、事務所の職員に元顧問が現金入りの封筒を手渡したという。
 政治資金や選挙運動に関する収支報告書に記載しておらず、政治資金規正法などに抵触する疑いが強い。
 政治資金規正法は、政治活動の透明性を確保するため、収支の作成、公表を義務付けている。受領した100万円が記載されていない以上、収支不明の裏金である。このような不透明な現金がいとも簡単にやりとりされているとすれば、由々しき事態だ。
 下地氏は「職員からヒアリングしたら職員は私に報告したと申し上げているが、どうも思い出せない」と言う。
 職員が無断で処理した可能性も示唆するが、そのようなことがあり得るのだろうか。秘書を経験した政界関係者は、議員の了解を得ずに領収書を発行しないことは絶対にあり得ない―と言う。発行しなければ裏金になるためだ。
 どちらにしても下地氏の責任は免れない。職員のせいにして済むなら政治資金規正法は有名無実になってしまう。
 日本維新の会の松井一郎代表は「収支報告書に記載していないのは、お小遣いにしたということと一緒。2年間もほったらかしにしていたのは過失では済まない」と述べ、議員辞職を求めている。
 「500」社は、カジノを含むIR事業の参入を目指していた。下地氏は県内の事務所などで元顧問と3回会い、同社トップだった人物とも衆院議員会館で面会している。
 下地氏は超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)の副会長だった。何らかの思惑があって接近したとみられてもおかしくない。
 「500」社の意向を受けた政府機関への働き掛けなどを下地氏は否定している。報告書を修正し、現金を返却する考えを示しているが、修正して済むなら収支報告書の信頼は地に落ちてしまう。
 専ら税金で活動する立法府の議員が法を犯しても何のペナルティーも受けないのでは納税者の不公平感は極まる。 離党届を出したというが、それで済む話ではない。裏金を受け取ったのなら、きっぱりと辞職して自らけじめをつけるべきだ。