<社説>日本郵政新体制始動 情報漏洩の解明不可欠だ


社会
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 日本郵政の増田寛也社長が就任後初めての記者会見で、元上級副社長が当時の総務事務次官から、保険不正販売を巡る行政処分の検討状況を聞き出した情報漏洩(ろうえい)問題について、検証する考えを明らかにした。

 監督官庁の事務方トップが、処分を下す相手側に情報を漏らすという、極めて特異で悪質な事案だ。
 総務事務次官と上級副社長が共に辞任したからといって、解明しないまま幕引きしていいはずがない。増田氏の判断は至極当然だ。
 前任の長門正貢社長は昨年12月末の記者会見で、次官の辞職に続いて上級副社長も退任することで「イーブン(引き分け)」との見方を示し、調査を実施しないと明言していた。なれ合い体質を象徴する姿勢と言えよう。
 増田氏に求められるのは、問題を矮小(わいしょう)化してふたをしようとする組織風土に大なたを振るうことだ。
 そのためには、かんぽ生命保険の販売を巡る不正に、前経営陣がどう向き合い、対処してきたかをつまびらかにし、責任の度合いを明らかにすることが不可欠だ。
 一昨年4月、NHKの報道情報番組「クローズアップ現代+(プラス)」が、郵便局による保険「押し売り」の実態を伝えた時、なぜ不正の究明と是正に本腰を入れて乗り出さなかったのか。
 それどころか、報道したNHKに圧力をかけたのはなぜなのか。一般国民の感覚と懸け離れた態度を取ってきた理由を突き詰め、根っこを断ち切らないことには、組織の再生などおぼつかない。
 情報の漏洩先だった元上級副社長は総務事務次官の経験者であり、NHK番組への抗議を主導した人物である。
 同じ旧郵政省採用の先輩後輩の間柄だから情報を漏らしたといわれるが、いつ、どのようなやりとりがあって漏洩に至ったのか。癒着は構造的な問題なのか。全てを明らかにしてもらいたい。
 政府は日本郵政の株式の約57%を保有する筆頭株主だ。日本郵政は日本郵便の100%、かんぽ生命保険の約64%、ゆうちょ銀行の約89%の株式を持っている。
 なれ合いと不正がはびこる体質を放置してきた政府の責任は重い。襟を正し、郵政グループへの監督官庁幹部の天下りは一切禁止することだ。
 増田氏は、かんぽ生命保険と日本郵便による保険不正販売の調査対象を拡大する方針を打ち出した。「(不正が)埋もれているものもある」との認識を示している。この際、大掛かりな外科手術でうみを出し切らなければならない。
 顧客が被った不利益の解消が最優先の課題だ。その上で、二度と不正が起きない企業統治体制を築く必要がある。
 地に落ちた信頼を取り戻すのは容易ではない。徹底した調査と事実の公表、責任の明確化が立て直しへの第一歩になるだろう。