<社説>新型肺炎が急拡大 過小評価せず対策徹底を


社会
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 中国湖北省武漢市で最初に発生した新型コロナウイルスによる肺炎が急拡大している。発症者は中国国内で470人を超え、17人が死亡した。日本、タイ、韓国、台湾、米国でも患者が確認された。

 厚生労働省は当初、人から人へはうつりにくいとの見方を示していたが、中国で医療従事者15人が感染したことが分かっている。世界保健機関(WHO)は「人から人への継続的な感染があるとみられる」と発表した。
 せきやくしゃみなどの飛沫から感染が広がると考えられている。実態がはっきりしない中で、新型ウイルスの威力を甘く見てはならない。政府は、最悪の事態まで想定し、万全の対策を講じるべきだ。
 原因不明の肺炎患者が相次いで確認されたと武漢市の当局が発表したのは昨年末。患者の大半は、動物も扱う海鮮市場を訪れていた。
 WHOは今月14日、新型コロナウイルスと認定した。コロナウイルスは、哺乳類や鳥類の呼吸器や消化器に感染することが知られている。
 感染拡大を許した責任の一端は中国の関係当局による不適切な初期対応にあるとみられる。情報の開示に消極的で、中国政府が記者会見を開いたのも22日が初めてだ。新型肺炎を伝えるNHK海外放送のニュースを中断するなど、情報統制を強めてきた。
 武漢市では肺炎に関する情報をインターネットに投稿した市民が治安当局に処罰されている。この措置を疑問視する声もある。状況が過小評価され、発生源とみられる海鮮市場の閉鎖まで時間を要した。
 2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した時も当局による公表が遅れ、感染が広がった。03年7月までにアジアを中心として774人もの死者が出た。
 日本を含む各国は、適切な感染症対策を取るよう中国政府に強く促した方がいい。
 新型肺炎は37・5度以上の発熱やせきを伴う肺炎症状が出るという。治療薬やワクチンはない。予防するには、こまめに手を洗い、マスクを着用するといった自衛策を講じることが大切になる。
 中国では24日から春節(旧正月)の連休に入り、沖縄を含む日本を、たくさんの中国人観光客が訪れる。水際対策を強化しなければならないのは言うまでもない。
 全国の空港や港の検疫所に、熱の出た人を感知するサーモグラフィーがあるが、日本で見つかった患者は解熱剤を服用していたため、チェックをすり抜けていた。
 一定期間内に武漢市を訪れたことのある人、武漢市に滞在した人と接触したことのある人は特に注意が必要だ。
 年間1千万人もの観光客が来訪する沖縄は、他県にもましてウイルス侵入のリスクを抱えている。1人でも患者が出れば、観光産業にも打撃を与えかねない。関係機関・団体が連携を密にし、警戒を続けることが不可欠だ。