<社説>新型肺炎指定感染症 こまめな手洗いで予防を


社会
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 むやみに恐れることなく正しい知識を持って備えたい。世界規模で感染が拡大する新型肺炎について政府は28日、指定感染症とすることを閣議決定した。来月7日に政令を施行する。

 感染症法に基づく指定は生命や健康に深刻な被害を与える恐れがある感染症を防止するための措置だ。2014年の中東呼吸器症候群(MERS)以来で5件目となる。
 最終的には危険性の高い順に1~5類に分けられ個別の対策を講じる。その前段階となるのが指定感染症だ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ2類感染症に分類される見込みだ。
 指定施行後は感染した人を強制的に入院させたり、就業を制限したりすることができる。汚染された場所を消毒する拡大防止策も可能となる。感染者が世界に広がる中、国内での感染拡大を防ぐには先手先手の対策が欠かせない。
 新型コロナウイルスによる肺炎は中国湖北省武漢市で最初に発生した。中国本土では28日の段階で、感染者が4千人、死者も100人を超えた。
 日本やタイ、ベトナム、カンボジアなどアジア諸国をはじめ、米国やカナダ、フランス、ドイツでも感染者が確認された。日々拡大の一途をたどっており、ブレーキがかかる兆候はない。
 経済的な影響も出てきた。中国政府は27日、海外への団体旅行を禁止した。日本政府によれば中国人観光客は訪日客全体の30%を占める。国内の観光関連業の先行きも不透明感が増している。
 観光立県である沖縄でも影響が出始めた。大型クルーズ船4隻の県内寄港が中止となった。定員数で見ると1万1586人に上る。ホテルでも宿泊のキャンセルが相次ぎ、中には2月上旬にかけて延べ千人に及ぶ施設もある。
 県によれば、19年に海外から訪れた観光客を国・地域別に見ると、最多は台湾の約93万人。次いで多いのが中国の約75万人だ。中国人観光客は前年より約20%増えていた。増加率は最も大きい。
 中国人観光客の1人当たりの消費額は空路利用者だけ見ても17年度で約14万円、18年度で約12万円と最多だ。交通費や飲食費、買い物費などを積算した消費額からすれば、県経済に及ぼす影響は決して小さくはない。
 新型肺炎の潜伏期間は1~14日間と推定され、症状が現れにくい人もいるだけに封じ込めは難しい。とはいえ、過度な恐れは禁物だ。現時点での対策は、専門の医師も指摘するように、インフルエンザと同じ対策を適切に行うことが重要だ。
 こまめに手を洗うこと、マスクを着用することなどが有効といわれる。
 人々の行き来の自由が経済の豊かさをもたらし、文化の多様性にもつながっている。日頃から予防を怠らず、冷静に対応したい。観光立県としての真価も問われている。