<社説>疑惑深まる桜見る会 招待者の解明が不可欠だ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 不都合な事実の隠蔽(いんぺい)を図る安倍政権の姿勢が、衆参両院予算委員会の審議を通じて色濃く浮かび上がった。首相主催の「桜を見る会」を巡る疑惑である。

 安倍晋三首相の山口県の地元事務所は「桜を見る会」への参加者を幅広く募集し、特別な便宜を図っていた。ツアーまで組まれた。首相は、政府が正式な招待状を発送する前に事務所から招待決定を通知する文書を送った事実を認め、「招待プロセスを無視した不適切な表現であり、問題があった」と釈明した。
 政府は「外交団、国会議員、都道府県知事、議長をはじめ、各界で功績、功労のあった方々を、各府省庁からの意見等を踏まえて幅広く招待している」と説明してきた。
 実際は、功績、功労の有無にかかわらず首相の支援者を多数招き、公費でもてなしていたのである。公的行事を私物化したことは明白だ。
 その点について首相は「招待基準が曖昧だったために歴代内閣でも地元の方々の出席はあった」と答弁した。
 悪事の露見した人が「あの人もやっている」と言って処罰を免れようとする例があると聞く。「へりくつを言うな」と一喝されるのが落ちだろう。まさか一国の総理大臣が同様の論法を持ち出すとは思いも寄らなかった。
 議員事務所が多数の参加者を募った事例がほかにもあったのだろうか。麻生太郎副総理兼財務相は、首相在任時に事務所が幅広く招待したかとの質問に「ない」と否定した。
 歴代内閣も支援者を招いていたと言うのなら、過去に開催した分を含め、全ての招待者の名簿を公開し、国民の判断を仰げばいい。
 肝心の名簿について、政府は公文書管理のルールに従い廃棄したと繰り返すが、消去した日時を示すログ(記録)の開示にさえ応じない。
 招待者名簿は予算が適正に執行されたかどうかを検証する上で欠かせない資料だ。本来、すぐに廃棄していい文書ではない。保存期間を1年未満に設定していること自体、公文書管理法の趣旨に背く行為と言える。
 首相は、自身の議員事務所による調査についても「個人情報に関わることで、誰を推薦し、招待したかは申し上げられない」と否定した。
 預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」元会長も首相推薦枠で招かれた疑いがある。同社は招待状の写真をチラシに印刷し勧誘に利用した。だが首相は「政府として明らかにすることは考えていない」と突っぱねた。
 その気になれば担当者の手控えなどから名簿を復元することは容易だろう。にもかかわらず首相が名簿の公表をかたくなに拒むのは、不適切な対応を裏付ける重要な証拠になるからではないか。
 国会審議を通じてそうした疑念がますます深まった。「前夜祭」を含め、実態の解明が不可欠だ。