<社説>首里城火災捜査終了 原因究明終わりではない


社会
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 昨年10月31日未明に起きた首里城の火災から3カ月が過ぎた。正殿や北殿、南殿など主要6棟が全焼し、2棟が焼損した火災について、県警は「出火原因の特定には至らなかった」として捜査の終結を発表した。

 焼失を二度と繰り返さないためには火災原因の科学的な究明が重要であり、県警や消防による捜査が注目されてきた。早期の再建に向けて国や県の作業が動き出す中で、捜査で出火原因が十分に解明されなかったことは今後の再発防止という点で課題が残る形となった。
 県警は、火元として有力視される正殿北東側の収集物を鑑定した。だが、大規模化した火災熱で金属類もほとんど溶けてしまうなど、火災の原因を示す痕跡の特定に難しさがあった。
 一方で、防犯カメラの分析や関係者の事情聴取から、放火などの犯罪事実は確認できなかったとし、管理者側の刑罰法令に該当する過失も認められないと結論付けた。
 出火原因を不明としながら、誰にも刑事責任を問えないと結論を出すことにはいまひとつ釈然としない思いもある。とはいえ、県警の判断はあくまで刑法に照らした結果だ。これで火災の全容解明や管理責任の問題が決着したわけではない。
 火災が起きた以上は、施設管理に不備があったことは間違いない。延焼を止められなかった防火体制にも多くの課題が見えてきている。
 正殿は木造でありながらスプリンクラーはなく、1階には煙感知器も設置されていなかった。管理する沖縄美ら島財団は夜間を想定した防災訓練を実施していなかった。
 正殿周辺に4基の「放水銃」が設定されていたが、1基は収納ぶたを開ける工具がなく、消火活動に使用されなかった。那覇市消防局の活動報告書によると、イベント用舞台装置が消防の放水の妨げとなる場面もあった。
 正殿前の御庭では翌日のイベントに向け、閉園後の夜間作業が火災の直前まで続いていた。当日の電力使用や電線保護の状況に加え、正殿周辺の利活用の在り方も議論していかなければならない。
 沖縄美ら島財団の当初の説明で、警備員から聞き取りした内容が二転三転したことも疑問を広げた。警備体制を含め、指定管理制度を通じた管理・人件費の削減による弊害を指摘する声もある。職員の訓練や要員の確保は十分だったのか。こうした点をつまびらかにする必要がある。
 再建は県民の願いだ。とはいえ、火災の原因や責任の所在があいまいなままでは、不安は消えない。検証はむしろこれからだ。
 首里城公園を所有する国、昨年2月に公園管理の移管を受けた県、指定管理者として実際の管理業務を担う沖縄美ら島財団が、情報公開と説明責任を果たすことが一層重要になってくる。