<社説>琉球新報活動賞 ひたむきさが社会の糧に


社会
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 第42回琉球新報活動賞がきょう4団体、2個人に贈られる。「一隅を守り千里を照らす」を基本理念に社会の一線で活躍する気鋭の人、団体を顕彰する。教育や文化、出版、地域、社会、産業の各分野でいちずに情熱を傾け挑戦を続ける姿から多くを学びたい。

 嘉数道彦氏は琉球舞踊・宮城流の初代宮城能造氏に4歳で師事し、最後の弟子となった。県立芸術大学在学中は新作組踊に関わるなど、持ち前の才能を発揮した。活動領域は広い。実演家、作家、演出家としての能力が期待され、2013年に国立劇場おきなわ芸術監督兼企画制作課長に就任した。新作組踊や沖縄芝居など、伝統芸能の普及に努め、未来に指針を示す。
 日本への施政権返還前から沖縄の状況を総合雑誌「世界」などで発信しているのが岩波書店(岡本厚社長)だ。沖縄関連書籍は100冊を超える。岡本社長は戦後75年の今も「日本の不正義、最大の矛盾が沖縄にある」と言う。基地の島に渦巻く不条理を出版を通して問い続ける。その姿勢は日本と沖縄の生きる道を模索する上で意義深い。
 放送大学沖縄学習センター客員准教授を務める藏根美智子氏は、教育現場で新聞を教材として活用するNIEの普及に力を入れている。新聞は学校、家庭、地域を結ぶ一番のコミュニケーションツールと提唱する。子どもの活動が紙面に取り上げられると、励みになり、地域の交流を促す効果は計り知れない。次代の人を育む取り組みだ。
 勝山シークヮーサー(安村弘充代表)は名護市勝山区でシークヮーサーの加工生産を続け、世界で通用する味を発信している。ベルギーの国際味覚審査機構の審査では最高賞を8年連続で受賞した。果汁やジュース、県内外企業との提携によるポン酢など、付加価値を創造した。地域を支え、活性化にもつなげる模範として貴重な活動だ。
 沖縄ニューカレドニア友好協会(仲村留美子会長)は2000年代まで知られていなかった移民の歴史に光を当てた。1905年から始まったニューカレドニアの出稼ぎ移民は4次にわたり、契約移民は821人に上った。こうした史実の掘り起こしに合わせて友好協会も06年に発足した。ますます交流を深化させ、絆を大切につなぎたい。
 日本トランスオーシャン航空(青木紀将社長)は、しまくとぅばの機内アナウンスや座席への紅型柄導入など地元密着企業として沖縄文化を積極的に発信する。社会的な多様性尊重の環境づくりにも翼を広げる。性的少数者(LGBT)へのサービス、勉強会も県内企業と開催した。世界自然遺産登録に向け、木製ストローを機内で提供した。
 受賞者、団体が社会に果たした貢献は計り知れない。ひたむきに、地道に、それぞれの分野で力を尽くす姿は、よりよい社会を築く糧となるだろう。