<社説>新型肺炎県内初確認 乗客の追跡調査が必要だ


社会
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 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の猛威がついに沖縄にも及んだ。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が寄港した際、船客を乗せたタクシー運転手の女性が感染していると確認された。

 タクシーの車内は密室に近い空間だ。適切な予防策を講じないまま罹患(りかん)した人に接触すると感染する危険性がある。観光・運輸業界を挙げて防止対策に取り組むべきだ。
 世界保健機関(WHO)によると、感染してから発症するまでの潜伏期間は1~12・5日と幅がある。発熱やせきなどの症状が現れ、肺炎を起こすことがある。感染していても症状が出ない人もいる。糖尿病などの持病がある人や高齢者は重症化しやすい。
 予防策として多くの専門家が一番に挙げるのは手洗いの励行だ。ウイルスの付着した手で口などに触れれば感染するリスクがある。外出から戻るたびに丁寧に手を洗うことだ。マスクの着用やうがいも心掛けた方がいい。
 職場では入室の際にアルコール消毒スプレーを使用するよう習慣付けたい。ドアのノブや机、共用パソコンなど、多くの人が接触する部分は入念に消毒する必要がある。
 睡眠不足や深酒は体力を奪い、抵抗力を弱めるといわれる。規則正しい健康的な生活を送ることも有効な感染防止策の一つと言えよう。
 新型肺炎による国内初の死者となった神奈川県在住の80代の日本人女性は、最近の渡航歴がなく、感染経路が明らかになっていない。
 和歌山県では病院に勤務する50代の男性外科医の感染が判明した。過去には海外で重症急性呼吸器症候群(SARS)が病院関係者を介して院内で拡大した例がある。
 県内で新型肺炎の患者を受け入れるのは県立北部病院、県立中部病院、県立南部医療センター・こども医療センター、県立宮古病院、県立八重山病院、琉球大医学部付属病院の6施設だ。院内感染を防ぐ万全の対策が求められる。
 県内で感染が確認されたのは今のところ1人だが、今後、さらに見つかる可能性も否定できない。女性のタクシーに乗った人は大丈夫なのか。「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客のうち感染した人たちの足取りを含め、追跡調査が必要だ。
 厚生労働省は、感染の疑いがある人を専門的に診察する「帰国者・接触者外来」を医療機関に設けるよう各都道府県に求めている。設置を急ぐべきだ。新型肺炎ではないかと、家族を含め多くの人が病院に殺到すれば混乱を招く。常時相談を受け付ける窓口の拡充も急務だ。
 政府は武漢市のある中国・湖北省に加え、浙江省に滞在歴がある外国人の入国を拒否する措置を取っている。さらに広げる必要はないのか。米国などは中国全土を対象に入国を認めていないという。水際対策の強化は不可欠だ。