<社説>桜「前夜祭」首相答弁 疑惑はますます深まった


社会
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 安倍晋三首相の答弁の矛盾が色濃く浮き彫りになった。国会で虚偽の答弁をしてきた疑いが強まってきたと言えよう。不誠実な態度を改め、直ちに野党の資料提出要求に応じるべきだ。

 17日の衆院予算委員会での桜を見る会「前夜祭」を巡る質疑で、首相の答弁の矛盾が次々と露呈した。
 首相はこれまで会場となったホテル側から明細書の提示はなく、代金は参加者個々人が会費の形式で支払い、領収書の宛名は空欄だったと説明してきた。
 ところが、ホテル側は野党議員の照会に対し、見積書や明細書を主催者に発行しないケースはないなどと文書で回答した。参加者個々人から会費形式で代金を受け取ることもなく、宛名が空欄の領収書も発行していないという。首相のこれまでの答弁を否定する回答である。ホテル側は主催者が政治家でも対応は不変とも答えている。
 首相は領収書の宛名について説明を修正した。「空欄だった」としていたが「一般的に宛名は『上様』として発行する場合があり、『上様』としていた可能性はある」と釈明したが、取り繕っているようにしか見えない。
 この日の予算委は首相のおわびから始まった。野党の質疑に「意味のない質問だ」とやじを飛ばしたことに「反省」の弁を述べたが、その後も誠意に乏しい答弁を続けた。
 つじつまの合わない事実は次々と委員会で明らかになった。矛盾する事実の確認を野党側は首相に求めた。これに対し首相は明細書の発行などについて自らの議員事務所とホテル側とのやりとりを説明している。「(ホテル側は野党議員に対し)あくまで一般論で答えた。個別の案件は秘密に関わるため、回答には含まれていない」と答弁した。自らの前夜祭は対象外であるかのような答えだ。
 しかし予算委後の毎日新聞などの取材に対しホテル側は「『個別の案件については、営業の秘密に関わるため回答に含まれていない』と申し上げた事実はない」と回答した。さらに発行を受けていないと首相が説明してきた明細書についても「主催者に対して明細書を提示しないケースはないため、例外はないと理解している」と答えている。
 国会を軽んじているとしか思えない。この間、新型肺炎の発生などを踏まえ「審議時間が政策論争以外に多く割かれている状況は国民、納税者に大変申し訳ない」と、野党側をけん制してきた首相の態度は見苦しい限りだ。野党は真相究明のため、追及の手を緩めてはならない。
 参加者名簿や明細書などを開示できないのは都合の悪い事実が表に出るからではないかと疑われても仕方ない。まずはこれら資料の開示が不可欠だ。政治資金規正法に問われかねない重大な問題である。未解明のまま済まされることは断じてあってはならない。