<社説>河井夫妻秘書逮捕 不正あったのか説明せよ


社会
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 秘書が逮捕された以上は、不正があったのかどうか、自身の口から公の場で説明すべきだ。国会議員として当然の責務である。それができないなら、もはや議員の任にとどまるべきではない。

 自民党の河井案里参院議員の公設秘書、夫である前法相・河井克行衆院議員の政策秘書、案里氏陣営スタッフの3人が、公職選挙法違反(買収)の疑いで広島地検に逮捕された。案里氏が初当選した昨年7月の参院選で、車上運動員に違法な報酬を支払った疑いが持たれている。
 案里、克行の両氏は、この期に及んでも「捜査中であり、事実関係に関するコメントは現時点では差し控える」との談話を発表しただけで、事件への言及を避けている。
 昨年10月に週刊文春の報道で問題が明るみに出た際、二人は説明責任を果たすと表明していた。だが、それから2カ月以上、公の場所から雲隠れした。1月に事務所が家宅捜索され、ようやく記者団の取材に応じたものの、捜査中を理由に説明を避けた。その場しのぎの言い逃れとしか受け取れない。
 3人の逮捕容疑は、昨年7月に14回、案里氏の選挙事務所などで、選挙カーでアナウンスする車上運動員14人に計204万円を手渡すなどし、日当1万5千円の法定上限を超える資金を提供した買収の疑いだ。
 3人のいずれかが公選法で定める連座制の対象と判断されれば、案里氏が失職する可能性がある。夫の克行氏は事実上、案里氏の陣営を指揮する立場にあったようだ。
 河井夫妻はもちろんだが、自民党本部の責任も看過できない。参院選の公示前、案里氏側に1億5千万円もの政治資金を支出していたからだ。落選した現職の10倍である。違法の疑いのある報酬の原資になった可能性がある。
 「辞職してくださいとは言いません。でも、私なら、もうやめています。なぜなら、それが政治家の良心ではないかと思うからです」
 誰あろう案里氏の発言だ。広島県議だった2006年12月、当時の藤田雄山知事を県議会で追及した。知事の元後援会事務局長が、政治資金パーティーの収入や支援企業からの寄付を実際より少なく政治資金収支報告書に記載したとして、広島地検に逮捕され、有罪判決を受けていた。
 県議会で案里氏は「政治家として、名に恥じない決断をしてほしい」とも迫った。
 くしくも今、出処進退の判断を迫られているのは案里氏であり、夫の克行氏である。
 安倍内閣は法治主義を無視する法解釈の変更によって東京高検検事長の定年を延長した。検事総長に据えるためだとみられている。検察の独立性を脅かしかねない事態だ。
 政権の意向を忖度(そんたく)し捜査の手を緩めることがあってはならない。広島地検は厳正公平、不偏不党の立場を堅持し事件を徹底解明してもらいたい。