<社説>東日本大震災9年 被災者支援に全力尽くせ


社会
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 復興への長い闘いは続いている。東日本大震災は発生からきょうで9年を迎えた。今もプレハブの仮設住宅に700人以上が住み、全国で約4万8千人が避難生活を送っている。政府は被災者の生活再建のためにあらゆる手だてを講じるべきだ。

 警察庁が1日現在でまとめた死者数は1万5899人。行方不明者は、遺体のDNA型鑑定で身元が特定されるなどして4人少なくなり、2529人となった。いまだに多くの人の行方が分からず、心の整理がつかない人もいるだろう。
 看過できないのは、被災した自治体の9割で人口減少が起きていることだ。被災42市町村のうち38市町村で震災前に比べ人口が減った。
 人口推計で減少率が特に高いのは宮城県女川町(41・5%)、同県南三陸町(35・8%)だ。岩手県は被災した全12市町村で減少した。
 東京電力福島第1原発事故の影響が大きい福島県の7町村は、実際の居住人口を独自に集計している。双葉町は人が住めず、浪江、大熊、富岡各町で住民が10分の1になった。仕事や子どもの教育などで避難先に定着した人も多い。震災を境に、人々の営みがいかに多く失われたかを思い知らされる。
 福島第1原発では昨年4月に3号機の使用済み核燃料プールからの燃料搬出が始まった。1~3号機のプールにある大量の燃料は危険性が高い。搬出は最優先の作業だが、難航している。
 2031年までに全6基での完了を目指している。溶融核燃料(デブリ)の取り出しは21年に2号機で始めると決まり、工法が検討されている。
 震災9年を前に安倍晋三首相が福島県双葉町などを訪れた。13年の東京五輪招致の演説で福島第1原発の汚染水漏れを「アンダーコントロール(管理下にある)」と保証したことについて記者から問われた。「正確な発信をした」などと述べたが、当時も今もコントロールされた状況とは到底言えない。
 核廃棄物は最終処分先も決まっていない。第1原発の原子炉建屋には地下水や雨水が流入し、デブリに触れて汚染水となっている。浄化処理しても放射性物質のトリチウムは除去できない。汚染水の放出先も検討課題だ。原発が「トイレのないマンション」と呼ばれるゆえんである。
 国は「絶対安全」と強調し、各地で原発の建設を推進した。しかしひとたび重大事故が発生すると、取り返しのつかない環境汚染を引き起こす。放射能を制御する技術は確立されていないからだ。
 子や孫に安全な環境を引き継いでいくには原発に依存しないエネルギー政策への転換が欠かせない。脱原発に大きくかじを切るべきだ。
 大規模な地震は断層帯がある県内でも起こり得る。震災の記憶を胸に刻み、減災の取り組みに一層力を入れたい。