<社説>経産省虚偽文書作成 規範意識が欠如している


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ここまで来ると、政府の中で腐敗がはびこっているのではないかと強く疑わざるを得ない。

 関西電力の役員らによる金品受領問題に絡み、経済産業省は3月16日に業務改善命令を出した。電気事業法は、改善命令を出す前に電力・ガス取引監視等委員会の意見を聞かなければならないと定めているが、経産省はこれを怠り、事後的に意見聴取を実施していた。
 それだけなら過失というレベルにとどまったはずだ。問題なのは、失態を隠蔽(いんぺい)するため、改善命令を出す前日の3月15日付で電取委の意見聴取をしたように担当職員が内部決裁を取っていたことである。上司も一連の行為を了解していたという。
 実際に意見を聴取したのは命令を出した後だった。経産省職員の行為は虚偽公文書作成罪に当たる可能性がある。
 外部から改善命令に関する情報公開請求を受け、決裁手続きの事実関係を確認する中で判明した。情報開示を求められていなければ、表面化しなかったかもしれない。たまたま露見したと言っていい。
 経産省の内部調査に対し、担当した職員らは「手続きに不備があったとなれば、対外的な批判は免れないと懸念があった」などと動機について釈明したという。
 全く言い訳になっていない。批判を回避するためなら、偽りの文書さえ平気で作成する。規範意識が欠如している。
 ばれなければ何をしてもいいという風潮が組織の中にまん延しているのだろうか。もしかすると発覚していないだけで、同様のケースはほかにも多数あるかもしれない。
 森友学園問題では、決裁文書の改ざんを強制された財務省近畿財務局の職員が自殺に追い込まれた。公表された手記には、全て佐川局長(改ざん当時の佐川宣寿理財局長)の指示と書かれていたが、安倍政権は再調査はしないと重ねて表明している。
 このような、疑惑をうやむやにして恥じない政権の体質が、政府中枢で働く人たちの順法精神をまひさせている可能性がある。
 今回の問題では、上司も了承した上で内容を偽った決裁文書を作成していたのだから、組織ぐるみの隠蔽工作と言えよう。
 梶山弘志経産相は3月31日の閣議後記者会見で「不適切な行為だ」と述べたが、「不適切」で済む話ではない。
 下された処分は「不適切な手続き」を承認するなどした管理職級職員が戒告、指定職級職員が訓告、監督責任のある事務次官と資源エネルギー庁長官は厳重注意だった。経産相も責任を取るべきだ。あまりにも軽すぎる。
 経産省は業務改善命令で法令順守体制の再構築などを関西電力に求めた。監督官庁自身が法を破っていたのだから、示しがつかないことこの上ない。組織内に潜む隠蔽体質を一掃することが急務だ。