<社説>コロナ県内初の死者 検査増やして感染防止を


社会
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 新型コロナウイルスの脅威が深刻の度を増している。15日には県内で初めて死者が出た。命に関わる感染症であることを県民一人一人が強く肝に銘じ、より一層、まん延防止に努める必要がある。

 国、県に対しては、検査体制の充実・強化を求めたい。国内のPCR検査件数は他の主要国に比べて極端に少ない。設備や人員の制約から、検査対象を重症化の恐れがある人や濃厚接触者などに絞り込んでいるからだ。これでは感染の実態を把握できず、適切な対策が打ちにくくなる。
 厚生労働省はこの間、クラスター(感染者集団)を追跡し拡大を防ぐことに主眼を置いてきた。その手法は限界に来ている。
 重症者の命を守る医療体制を維持することは至上命令だ。そのためには、保健所を通さず、診察した医師の判断によって速やかに検査が実施できる態勢に切り替えることが欠かせない。
 37・5度以上の発熱が4日も続くのを待って検査をしたのでは、その間に、同居する人たちまで感染してしまう。入院治療が遅れるうちに症状が重篤になる恐れもある。
 罹患(りかん)した人をできるだけ早く見つけ出し、症状の重い人は感染症指定医療機関などに、軽症者はホテルなど臨時の宿泊療養施設に振り分けていかなければならない。
 群星沖縄臨床研修センター(浦添市)の徳田安春センター長らはPCR検査センターの設置を県医師会に緊急提言している。設置場所として公共の公園や運動場などを挙げた。原則として遠隔診療で検査の要否を医師が判断し、センターに誘導する流れにしたいという。
 センターで検体の採取に従事する医師、看護師ら要員の確保、感染防止対策の徹底、検査機関までの搬送態勢の確立―といった課題がクリアできるなら、すぐにでも設置した方がいい。
 県は軽症者や症状のない人を受け入れるホテル1カ所を那覇市内に確保した。17日から受け入れが始まるという。収容人数は50人だが、それだけで十分だとは思えない。複数の宿泊療養施設を今から準備しておくべきだ。
 県内で初めて感染が確認されたのは2月14日だった。それが今では100人近い。感染経路が不明のケースが増加している。対応を誤れば、医療崩壊を招きかねない。
 感染者の8割は軽症で、無症状の人もいるという。県内でも既に市中感染が相当程度広がっていると考えられる。
 高齢者や持病のある人は重症化や死亡のリスクが高くなる。そのような人たちを感染させてはならない。
 自分自身や周りの人たちを守るため他人との間に十分な距離を取る「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)を習慣付けることが大切だ。不要不急の外出も控えたい。可能な限り在宅勤務を加速させることが急務となろう。