<社説>新型コロナ病床逼迫 医療崩壊防止へ対策急げ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルスの感染拡大で、患者を受け入れる医療機関の病床が逼迫(ひっぱく)している。沖縄も危機的状況だ。医療崩壊は何としても防ぎたい。

 共同通信が新型コロナウイルス感染者に対応できる病床数を調査したところ、東京、大阪、兵庫は既に患者数がベッド数を超えていた。この3都府県に次いで逼迫しているのが沖縄で、17日時点で空き病床はゼロとなっていた。事態は極めて切迫している。
 新型コロナ患者を受け入れる沖縄の感染症病床は6医療機関の計24床だった。県は、協力医療機関と合わせて計40床程度を確保すると説明していたが、4月に入り感染者が急増し、入院患者はこれを大きく上回って推移している。
 県は19日、新型コロナで入院中だった2人が新たに死亡したと発表した。県内での死者は計3人、感染者は空港検疫での確認を含め116人となった。各病院は一般病床を含めて専用病床の確保に努めているが、受け入れ環境は日に日に悪化している。
 新型コロナウイルス感染者の8割は軽症で、自覚症状が全くない人もいる。2割は肺炎を起こすなど重症となる。
 厚生労働省は2日付で、自治体が用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県に通知し、軽症者らを入院させてきた対策を転換した。対応が遅かった感は否めないが、沖縄でも県が借り上げた那覇市のホテルで17日から無症状や軽症の人の受け入れが始まっている。
 ただホテルの収容規模は50人程度だ。現在の感染拡大からは、別の施設の確保や医療従事者らの手当てが急務であることは明らかである。
 空き病床調査からは、未曽有の医療危機と向き合う現場の疲弊が限界に達しつつあることが分かる。コロナ患者は通常の患者に比べ格段に負担がかかる。一方でマスクや防護服などの物資は足りない。コロナへの対応に追われ、都市部では救急患者を受け入れられない事態も出ている。
 医療基盤が脆弱(ぜいじゃく)な地方も懸念が大きい。院内での集団感染で外来診療が休止に追い込まれる病院もある。病床確保へ県境をまたいで受け入れを調整する案もあるが、離島県の沖縄では難しい。さらに病床の乏しい県内離島地域はもっと事態が深刻だ。
 安倍晋三首相は17日の記者会見で医療従事者の処遇改善や保健所の負担軽減のための検査センター設置を表明した。物資や機器の供給、人員確保、効率的な検査態勢確立など具体策をとにかく迅速に実施すべきだ。後手に回るような対応はもう許されない。
 「家族にも会えず病院内で寝泊まりしている」―。那覇市医師会は9日の段階で独自の緊急事態宣言を発表し、病床逼迫や現場の窮状を訴えていた。国や自治体によるさまざまな支援策と並行して、一人一人が新型コロナウイルスにうつらない、うつさないための対策に努めたい。