<社説>県が緊急事態宣言 感染リスクを減らしたい


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることを受け、玉城デニー知事は20日、県独自の「緊急事態宣言」を発出した。

 県内の人口1万人当たりの感染者数は20日現在0・76人で、全都道府県中14番目に多い。独自の「宣言」に踏み切ったのは、事態が切迫し新たな局面を迎えたからだ。ウイルスの脅威は確実に個々の県民に近づいている。
 宣言は県民一人一人が接触機会を8割減らし、活動を5分の1にすることや県をまたぐ行き来、本島と離島間、離島と離島間の移動を控えることを求めている。「今が感染拡大を食い止める瀬戸際」として、4月末からの大型連休を前に県民の自覚を促し、感染拡大の収束を目指すものだ。宣言を重く受け止めなければならない。
 玉城知事は併せて「特定警戒都道府県」に沖縄を指定するよう政府に要請する方針を明らかにした。政府が16日に緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した際に、重点対策が必要な地域として新たに打ち出した区分だ。
 7日に緊急事態宣言が発令された東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県と、北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都の6道府県の合わせて13自治体が指定されている。
 対象は累積感染者数が100人以上、10日未満で感染者数が倍増、経路不明の感染者が半数以上―という三つの指標を考慮して決めたという。
 沖縄県内で感染が確認されたのは今月11日に57人だったのが20日には122人になり倍増した。経路不明の感染者は20日の時点で63人に上っており、半数以上を占めた。三つの指標に当てはまる。玉城知事が要望した通りに指定されても何ら違和感はない。
 政府は「特定警戒都道府県」について、新型コロナ特措法に基づく知事の使用制限の「要請」に応じてもらえない場合に「指示」を出す地域だと説明している。権限をより強力に行使できる地域ということになる。非常事態だからといって権力が乱用されることがあってはならない。
 政府は不要不急の外出の自粛など、行動の制限を繰り返し求めてきた。新たな感染者を増やさないためには不可欠な要請である。だが、やみくもに国民に協力を求めるだけでは不十分だ。行政には、状況の変化に即応し的確な対策を迅速に講じる責務がある。
 県内でもクラスターが発生していたことが明らかになった。PCR検査体制の大幅な拡充・強化、医療資材不足の解消など課題は山積している。医師、看護師ら医療従事者のケアも欠かせない。医療崩壊だけは何としても食い止めなければならない。
 県は緊急事態宣言の理由について繰り返し県民に説明し理解を求めると同時に、行動の制限や休業などによって打撃を受ける人たちの支援に全力を挙げるべきだ。