<社説>こどもの日 子ども目線が大切な時だ


社会
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 きょうは「こどもの日」。祝日法では、子どもの人格を重んじ、幸福を図ることなどを定めている。この趣旨の重みを改めてかみしめたい。

 と言うのも、今年は例年と大きく異なる状況にあるからだ。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため外出自粛要請や休校の措置が取られ、子どもたちの大半は家庭だけを居場所にせざるを得ない。
 そのかけがえのない居場所が今、急変している。収入が激減したり、仕事を失ったりした親がストレスを抱え、理性を失いやすい状態のまん延だ。子どもへの虐待やDV被害などの家庭内暴力が世界的に急増している。この状況を国連は「シャドー・パンデミック(陰の世界的流行)」だと指摘し、警鐘を鳴らしている。
 新型コロナの感染を防げても、家庭内暴力によって命を脅かされては元も子もない。コロナ危機により、子どもの人格や幸福を重んじる「こどもの日」の趣旨を徹底的に実行する姿勢が大人たちに一層強く問われている。
 沖縄では、コロナ危機下にない時でさえ、児童虐待や「子どもの貧困」は深刻な問題だ。コロナ禍は、これらの深刻化に拍車を掛ける恐れがある。
 県は増加傾向にある児童虐待を重く見て、子どもの権利を尊重する条例を制定し、4月に施行した。条例は保護者に対し、体罰や心身を傷付ける行為を禁じることを「責務」と規定した。市町村や学校など関係機関にも施策の実施を義務付けたが、現在の休校・外出自粛下では、虐待を察知しにくい。絶対に子どもを傷つけないという保護者の意識がますます重要になっている。
 条例は虐待問題を「子どもの貧困」の視点から捉え、困窮家庭への支援の重要性も掲げている。困窮家庭がさらに苦しめば、ネグレクト(育児放棄)などに結び付きやすいからだ。その意味で、食料を供給するランチ・サポートなどの支援は非常に有意義だ。
 一方で関係機関や地域の大人たちは、助けを求める子どもたちのシグナルに一層敏感になる必要もある。
 自宅学習を巡っては、学校配信や文部科学省推薦のデジタル教材にアクセスできない児童・生徒がいるため、学習格差が問題となっている。また自宅に居る時間が長いので、ゲームなどに没頭するスマホ依存症の恐れも高まっている。
 ストレスがたまっているのは大人たちだけではない。友達と会えないなど、子どもたちもつらい。子どもの目線に立って感情をくみ取り、丁寧にコミュニケーションを図ることが、今ほど大切な時はない。新型コロナの怖さや感染予防対策、なぜ休校が続くのかなどについて丁寧に説明し、疑問にも答える努力が親たちに求められている。
 子どもは社会の鏡だ。子ども社会には、社会全体の矛盾が先鋭かつ象徴的に表れる。コロナ危機がもたらす子どもたちの「叫び」を聞き逃してはならない。