<社説>地上イージス計画 コロナ禍に兵器爆買いか

 政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)に配備する現行計画案を断念し、秋田県内の国有地を軸に選定し直す方向で調整に入った。秋田県の佐竹敬久知事をはじめ地元が強く反対する中で、ごり押しは許されない。当然の帰結である。

 問題なのは事ここに至っても配備の方針を堅持していることだ。候補となる国有地は、新屋演習場を選んだ過程で浮上した場所が想定されている。ご都合主義も甚だしい。
 防衛省は昨年5月に秋田県に示した説明資料で、新屋以外の秋田、青森、山形3県の国有地について、配備候補地となり得ないことが分かった―と断じていた。
 ところが、レーダーに対する遮蔽(しゃへい)条件の面で不適とされた全9カ所で周辺の山の仰角が実際より大きく計算されていたことが間もなく明らかになる。前代未聞の大失態だ。
 防衛省は外部の専門業者に委託して東北地方で再調査を進める。秋田県内では、新屋演習場を除くと9カ所が対象だ。当初の報告書は、このうち5カ所を遮蔽条件のため適さないと結論付けていた。
 仰角が違っていた候補地については異なる評価もあり得るだろうが、報告書には「今回抽出した国有地18カ所全てについて、防護範囲のシミュレーションを実施したところ、新屋演習場、むつみ演習場(山口県)のように我が国全域を効果的に防護することはできないとの結果が出ました」との記述もある。
 再調査でどんな結論が出たとしても、後付けの理屈にしかならない。はいそうですか、と信用するわけにはいかないだろう。
 そもそも、イージス・アショアの必要性には大いに疑問がある。候補地の秋田、山口両県は、米ハワイ、グアムと北朝鮮を結ぶ直線上にあり、米国を守ることが真の目的ともいわれる。同時に飛来する多数のミサイルには耐えられないという見方が強い。
 2基の取得費、配備から約30年間の維持・運用費は計約4500億円と見込まれている。米国製兵器を売り込むトランプ政権の求めに応じた「爆買い」にしか映らない。
 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため大規模な財政出動が必要とされる中で、「無用の長物」ともなり得る防衛装備に巨額の国費を投じる余裕などあるはずがない。政府は、イージス・アショアの配備計画を撤回し、白紙に戻すべきだ。
 政府が新屋演習場への配備案を見直すのは地元の理解が得られないためだ。他方、名護市辺野古の新基地建設では、県民投票で反対の民意が示されたにもかかわらず、埋め立てを強行し続けている。
 二重基準にも見える対応の落差だ。政府は沖縄でも民意を尊重する姿勢を示してもらいたい。県内移設を伴わない普天間飛行場の全面返還を追求すべきだ。



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