<社説>コロナと県民生活 経済弱者の支援急ぎたい


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、休校やイベントの自粛などの措置が取られてから2カ月余。経済活動が制限された影響はいよいよ県民生活に及んできた。

 本紙が沖縄大学地域研究所の協力を得てインターネット上で実施した県民生活アンケートで、「お金がなくて食料や生活物資を買えない」と答えた人が26%、「家賃や住宅ローンを払えない」も25%に上り、食・住という生活の基盤が脅かされている人が多数いることが分かった。
 特に自営業や非正規職員で所得が急減したと答えた割合が高かった。13%は「倒産したり解雇されたりした」と回答しており、経済的弱者がさらに追い込まれている。
 給付金や助成金の支給は一刻を争う。事業者への家賃補助など支援策をさらに拡充しなければならない。また困窮は心理面にも大きな影響を与えていることが浮き彫りになった。必要な人へ支援を届けるよう、社会全体で目配りし、コロナ禍の影響を最小限に食い止めなければならない。
 アンケートは4月28日~5月6日の連休中に実施し、2456件の回答があった。ネット上で回答する形式なので、声を上げたい人が応じる傾向がうかがえる。回答者の約7割が30―40代というのもネットという手法や子育て世代により多く呼び掛けた結果だろう。
 しかし短期間で2500件近い回答が寄せられ、98・5%が沖縄県内居住と答えた。困窮する県民の一定の声を反映しており、その声は国や県の施策に生かしていく必要がある。
 見逃せないのは心理的な影響が大きいことだ。心理的ストレスなどの指標となる設問では、44%が気分障害や不安障害に相当する心理的苦痛を感じていると回答した。精神状態の悪化は重大だ。
 精神的に追い詰められ、家庭内にこもらざるを得ない人たちが増えることによって、家庭内暴力(DV)や児童虐待が増加する危険がある。現に県内でも妻子に暴力を振るったとして父親が逮捕される事件があった。
 また家計の悪化から大学生が学業を続けられなくなったり、子どもたちが高等教育を受けられなかったりする事態になれば沖縄社会の損失は計り知れない。
 コロナ禍は長期化も予想される。観光を主要産業とした県経済の構造では、感染が収まっても観光客数が回復するまでに時間がかかる。2001年の米中枢同時テロの際は観光客数が戻るのに2年、09年の新型インフルエンザ流行時はリーマンショックや東日本大震災の複合要因もあり4年を要した。
 苦しむ人たちの声をすくい上げ、経済支援を急ぐとともに雇用を守り、学業を保障し、DVや虐待にきめ細かく対応しなければならない。アンケートは社会全体で取り組むべき課題を突きつけている。