<社説>コロナ一色の弊害 政権の体質厳しく監視を


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ緊急事態宣言下である今だからこそ、国民は一層、目を光らせなければならない。隠蔽(いんぺい)、改ざん、私物化などの疑惑が山積する安倍政権と、その政権に忖度(そんたく)する官僚たちの体質に対してである。

 本来なら政権を監視する役割を担う国会やメディアの議論や情報は、コロナ一色と言っても過言ではない。国民の命や暮らしが大きく関わる喫緊の課題なので、やむを得ない面はある。
 他方、その課題解決の成否を左右する諸施策が、多くの疑惑を抱える安倍政権によって打ち出されていることを忘れてはならない。
 未解明・未解決の疑惑が横たわっていることを念頭に置きつつ、コロナ問題を巡る政府の状況判断や対策の在り方、説明責任、民主的手続きなどが適正かつ公正であるかを見極める必要がある。例えば、安倍首相による公的行事の私物化が指摘される「桜を見る会」を巡る疑惑だ。
 安倍政権下で参加者が急増し、首相の事務所が地元支援者を募る「ツアー」が発覚した。野党の追及に政権は十分な説明を尽くさず、疑惑は解明されていない。預託商法が問題化した「ジャパンライフ」の元会長が首相推薦枠で招待された疑惑も浮上した。東京都内の高級ホテルで開かれた夕食会も問題視されたが、実態解明は進んでいない。
 森友学園の国有地売却問題では、発覚から3年を経て、自殺した財務省近畿財務局職員の遺族が国や元国税庁長官の提訴に踏み切った。安倍首相の国会答弁に端を発し、政権への忖度や保身から幹部官僚が決裁文書の改ざんを指示、違法行為を押し付けられた現場担当者が良心の呵責に苦しみ、犠牲となった経緯が浮き彫りになった。この問題も解明すべき点がいまだ多い。
 国会で審議入りしている検察庁法改正案も、検察権の独立を揺るがす大問題である。最高検の次長検事、高検の検事長は内閣の判断で、各地検トップの検事正は法相の判断で、役職の延長を可能にする法案だ。政権の意に沿う人を長期間、検察首脳に据えられる仕組みは危険極まりない。
 沖縄に目を向ければ、県が新型コロナ対策関連業務に忙殺される中、政府は名護市辺野古の新基地建設に伴う設計変更を県に申請した。コロナ対策として玉城デニー知事が県独自の緊急事態を宣言した翌日だ。県職員は感染防止のため半数が在宅勤務する取り組みを始めたばかりだった。
 コロナ禍のさなかに火事場泥棒のような対応は許されない。安倍政権は、問題が山積する辺野古新基地建設や政権に向けられた疑惑から国民の目をそらしたいに違いない。
 一方で、独断や忖度がまん延する政権の体質があだとなり、適正で迅速なコロナ対策が打ちにくくなっている可能性もある。政権を厳しくチェックする目を持つことが、国民一人一人に問われている。