<社説>小中高校授業再開 命と健康に最大限配慮を


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、玉城デニー知事が県民に求めてきた活動自粛や休業要請が20日で終了したのに伴い、21日から県内全ての小中高校が再開した。

 県立学校は31日までは「分散登校」など段階的な措置をし、6月1日から通常通りの授業をスタートさせる。子どもたちは長期間、家での滞在を余儀なくされた。学校で友達と一緒に学べる機会を取り戻せたことは喜ばしい。
 ただ、新型コロナウイルスの感染自体が終息したわけではない。学校、家庭、社会には今後も引き続き、児童生徒の命と健康に最大限の配慮をすることと、感染の再流行に備えた対策や準備が求められる。
 文部科学省は登校の再開に当たって、複数の予防策を示した。生徒間の距離を1~2メートル離すことや、発熱した生徒を待機させる別室の確保などだ。教室の広さ、活用できる部屋が不十分で対応に苦慮している学校もある。
 校内でクラスターが発生する事態は何としても避けなければいけない。どうすれば児童生徒が安心して学校生活を送ることができるかを最優先に考え、柔軟な姿勢であらゆる対策を講じてほしい。
 春休みを挟んで休校期間が最長2カ月を超えた学校もある。学習の遅れを取り戻そうとするあまり、カリキュラムが過密になると児童生徒の負担は大きくなる。習熟度にも個人差があるため、学校側は、取り残される子どもが出ないよう通常以上の配慮をする必要がある。
 文部科学省は特例で、小中高校の最終学年以外は教育課程の一部を次の学年に持ち越すことを認める通知を出した。学校現場には学習の進め方の計画の変更が求められる。都道府県や市町村によって授業の進み具合にばらつきが出ないように、国や県はカリキュラムやスケジュールの目安を早急に示してほしい。
 政府は19日、導入の可否を検討している9月入学制を巡り、各省の事務次官らの会議で2021年9月に移行する場合の一斉実施案と段階的実施案の2案を示した。9月入学制の導入となれば学校現場だけではなく、社会全体の仕組みに大きな影響を及ぼす。議論は必要だが、コロナ禍に紛れて短期間で結論を出すのではなく、国民的な議論を時間をかけて行うべきだ。
 子どもたちが、長い休校で崩した生活のリズムを取り戻すには時間がかかる。今年は長期間、外出自粛を求められるなど、例年と事情が大きく違う。学校現場は必要に応じて医療や福祉など関係機関と連絡を取りながら児童生徒のケアに努めてほしい。
 新型コロナウイルス感染症が今後再流行する可能性は消えていない。学校現場にはオンライン授業の教材作成などの対応も必須だろう。政府は9月入学制を議論する前に、再休校を余儀なくされる事態に備え、インフラなどの充実を急ぐべきだ。