<社説>黒川検事長辞表提出 任命した内閣の責任重い

 東京高検の黒川弘務検事長が辞表を提出した。新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の外出自粛が呼び掛けられている5月上旬に、東京都内の新聞記者自宅で記者らと賭けマージャンをしていたことが発覚したためだ。

 東京高検検事長は、検事総長に次ぐ検察ナンバー2だ。「法の番人」とも言われる検察の首脳が賭博行為の疑いを持たれるなど、あってはならない。しかも新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言が発出され、政府や都道府県が「3密」を避けるよう求めているさなかだった。
 金銭をいくら賭けていたのか。検察幹部としての自覚はあったのか。黒川氏は自ら国民に説明する必要がある。
 問題は黒川氏個人の不祥事というだけではない。不当な法解釈を押し通し、黒川氏を検事長として留任させた内閣の任命責任が問われる。
 検察庁法は検察官の定年を検事総長は65歳、それ以外は63歳とし、定年の延長は規定していない。今年2月に63歳を迎えた黒川氏は、そこで退官するはずだった。
 ところが政府は1月末の閣議で、黒川氏の勤務を半年間延長する前代未聞の決定をした。このため、黒川氏は定年を超えても検事長の職にとどまっていた。
 安倍晋三首相は、国家公務員法の定年延長を検察官にも適用できるとして黒川氏の処遇の正当性を主張したが、全くの詭弁(きべん)だ。
 検察官に特別の定年が設けられたのは、一般の国家公務員よりも手厚い身分保障を受けることなど、その職務と責任に特殊性があることによるものだ。
 従来の法解釈を覆してまで黒川氏の定年を延長したのは、検事総長が代わる時期まで続投させ、次の検事総長に据える官邸の意向があったとされる。
 その揚げ句、政府は後付けで黒川氏の定年延長を正当化するかのように、時の政権の判断で検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案を国会に提出した。
 集団的自衛権の行使を容認した時のように政権の都合に合わせて法解釈をゆがめ、ついには法律そのものを変えてしまおうとする。法治主義を破壊する安倍政権の横暴だ。
 検察庁法改正案に反対の声を上げた元検事総長らは意見書で、黒川氏の定年延長に対し「検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない」と違法性を断じている。
 黒川氏は政府から定年延長を打診された時に、検察庁法に基づかない提案として固辞すべきだった。違法な勤務延長を受け入れたこと自体、法を厳格に執行する資質を欠いているといえよう。
 内閣の責任は重大だ。黒川氏の更迭にとどまらず、安倍首相、森雅子法相ら閣議決定の当事者も責任を取るべきだ。そして、検察庁法改正案は廃案にすべきだ。



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