<社説>「桜」夕食会で告発 うやむやにしてはならぬ

 検察は本当に厳正公平、不偏不党の立場を堅持して職務を遂行しているのか。その試金石とも言える事案だ。

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」前日、後援会が開いた夕食会に参加した有権者に飲食代を提供したとして、全国の弁護士や学者ら約660人が、公選法違反(寄付行為)などの疑いで、首相と後援会幹部の計3人に対する告発状を東京地検に提出した。
 桜を見る会を巡る数々の疑惑は、いまだに何一つ解明されていない。このまま、コロナ禍のどさくさに紛れてうやむやにされることなど、決してあってはならない。
 告発対象の夕食会は2018年4月に東京都内のホテルで開かれた。首相の支援者ら約800人が参加し、1人5千円の会費が徴収された。
 告発状は、1人当たりの飲食代は少なくとも1万1千円はするのに5千円ずつしか徴収せず、差額の6千円程度を提供した公選法違反の疑いがあるとする。さらに、夕食会の収支が後援会の政治資金収支報告書に記載されていないことから、政治資金規正法違反の疑いがあるとしている。
 夕食会が適法なものだったかどうかはホテルから明細書を取り寄せて公表すれば分かることだ。しかし安倍首相はかたくなに拒み続けている。
 3月4日の参院予算委員会では「明細書は事務所で保存していないし、受け取ったことを記憶していないということだ。ホテル側は、公開を前提に示すことは、営業上の秘密ということもあり、提出できないということだ」「補填(ほてん)した事実はない」と答えた。
 それが本当なら、なぜホテル側を説得し了承を取り付けないのか。ホテルの意向を口実にして公表を避けているとしか受け取れない。
 夕食会について首相は、受付で会費を受け取った事務所スタッフがホテルから預かった領収書を参加者に手渡し、預かった会費をそのままホテル側に渡していると説明してきた。そのため後援会に収支は発生しておらず、記載義務はないと主張している。
 預かった時点で収入、ホテル側に渡した時点で支出が生じたと考えるのが普通だろう。常識的な感覚とは懸け離れた言い分だ。ホテルとの契約主体は後援会ではなく参加者個人―という説明も詭弁(きべん)にしか聞こえない。
 折しも、検察庁法に反する閣議決定で定年が延長された黒川弘務東京高検検事長が、賭けマージャンの発覚によって辞職したばかりだ。検察と政治権力のあるべき距離感がクローズアップされる中、東京地検は告発をどう取り扱うのだろうか。
 検察庁のホームページに掲げる「検察の理念」には「権限の行使に際し、いかなる誘引や圧力にも左右されないよう、どのような時にも、厳正公平、不偏不党を旨とすべきである」というくだりがある。ぜひとも公正誠実に職責を全うしてもらいたいものだ。



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