<社説>沖国大遠隔授業支援 教育の機会均等に全力を


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大は、教育界にも大きな課題を突き付けている。教育の機会均等の確保である。

 教育基本法第3条は、全て国民は等しく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないとし、経済的地位などによって教育上差別されないと定めている。その上で、国や自治体は経済的理由で修学困難な人へ奨学の方法を講じなければならないと規定している。
 新型コロナ感染予防のために休業せざるを得ない学校がオンライン授業を取り入れる中、学習機会の格差が問題になっている。経済的理由などで授業を受けられない生徒や学生がいるからだ。 
 このため沖縄国際大は通信環境整備に必要な費用を補助する奨学金を設立した。全ての学部生と大学院生を対象に1人当たり5万円を給付する。経済的に厳しい学生に10万円を給付する大学独自の奨学金も新たに設けた。
 遠隔授業を受ける学生に対する大学独自の支援策は県内初だ。実効性は未知数かもしれないが、新たな課題に積極的に対処する姿勢を評価したい。問題は深刻だからだ。
 学生らはアルバイト収入減でオンライン授業にかかる経済的負担に悲鳴を上げている。県内大学生有志がSNSなどで募ったアンケートで、アルバイト収入が減った学生は「ゼロ」の38・4%を含む73%に上った。Wi―Fi契約やパソコン購入などオンライン授業に経済的負担が増えるとの回答は28%を占めた。
 休校中に図書館や大学などの施設が使えず、オンライン授業も十分とは言えないため学費の減免を訴える声も多かった。3月からバイト代がなくなった学生の一人は、親も経済的に苦しく「家賃の支払いが滞っている」と明かした。家庭の所得が激減した児童・生徒も同じような問題に直面しているに違いない。
 学習格差は経済的理由だけではない。地域や学校によっても差がある。Wi―Fiがつながらないなど通信環境が整っていない地域や、市町村によって情報通信技術を活用した学習支援に濃淡がある。オンライン学習は塾や私立学校で進む一方、公立は遅れており、塾に通えない生徒と差が広がる可能性もある。
 そもそもの混乱は、政府が教育の機会均等確保の問題を十分に検討せず、緊急事態宣言前から全国一律で休校を要請したことから始まった。休校要請解除は自治体任せだ。教育の機会均等を危うくしている政府の責任は大きい。
 県教育委員会は県立学校の生徒を対象に家庭の通信環境調査を進めている。環境が整っていない生徒には無償でWi―Fiを貸し出す予定だ。まずは家庭や地域、経済的環境を正確に把握する必要がある。国や自治体、学校は、児童・生徒、学生、父母らの一つ一つの声に耳を傾け、それらの声を基にして的確な支援に全力を挙げるべきだ。