<社説>強盗容疑の米兵送検 日本が身柄拘束すべきだ


社会
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 北谷町で今月12日に発生した強盗事件で、県警が米陸軍一等兵と米空軍軍属の男2人を強盗、建造物侵入の容疑で書類送検した。厳重処分の意見を付けている。

 問題なのは2人の身柄を確保しているのが米軍であって、日本の警察ではないことだ。米軍人・軍属による公務外の犯罪で、警察が容疑者を逮捕したときは日本側が身柄を確保し続ける。だが、身柄が米軍にあるときは、起訴されるまで引き渡さなくてもいいことになっている。日米地位協定によって米軍に付与された特権だ。
 1995年の少女乱暴事件を契機として、凶悪な犯罪の場合は起訴前の身柄引き渡しについて米側が「好意的な考慮を払う」とする運用改善を日米合同委員会が合意した。
 ただし「殺人、強姦という凶悪な犯罪」に限定され、今回のような強盗事件は、国内で凶悪犯に分類されていても対象ではない。しかも、「好意的な考慮」を払うかどうかは米側の裁量次第だ。
 主権の放棄にも等しい取り決めを長年にわたって容認し異を唱えようともしない日本政府の態度は卑屈であり、怠慢としか言いようがない。
 特権的地位を与えていることが、協定で守られているという意識を米軍関係者に根付かせ、事件・事故の発生を助長してきた現実がある。
 過去には、基地内で軍の監視下に置かれた米兵が共犯者と口裏合わせをしたり、証拠隠滅を図ったりした事例もある。地位協定は捜査を進める上で大きな壁になってきた。
 政府は、地位協定の改定を米国政府に提起し、全ての罪種について、起訴前の身柄引き渡しを義務付けるよう強く求めるべきだ。
 今回、強盗事件で書類送検された2人は、12日午後3時55分ごろ、北谷町北谷の両替店に刃物を持って押し入り、従業員に刃物を突き付けて現金約690万円相当を奪った疑いが持たれている。
 県警は防犯カメラの映像などから容疑者2人が嘉手納基地内に逃走したことを確認した。米軍に捜査協力を要請し、米軍が身柄を確保した2人を任意で取り調べていた。
 客観的な証拠が多く、ほぼ全面的な自供が得られたこともあって、捜査は比較的順調に進んだようだが、それでも発生から2週間かかっている。米軍関係者でなければ、とうの昔に逮捕され、送検されていたはずだ。日本人であろうが米軍人・軍属であろうが、区別なく捜査ができるようにしなければ真の意味での主権国家とは言えない。
 1972年に沖縄が日本に復帰してから昨年末までに、県内で発生した米軍関係者の犯罪は警察が摘発しただけでも6029件に達する。このうち580件が殺人や性的暴行、強盗などの凶悪犯だ。
 県民は基地から派生する犯罪に生命と財産を脅かされ続けている。政府はこの現実から目を背けてはならない。