<社説>県議選きょう告示 コロナ禍に負けず投票を


社会
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 任期満了に伴う県議会議員選挙が29日、告示される。6月7日の投開票日に向けて、沖縄の行く末を占う9日間の選挙戦が始まる。

 沖縄の日本復帰後、13回目となる県議選だが、今回ほど異例な状況もないだろう。新型コロナウイルス感染症が流行する中で、立候補予定者は事務所開きなど屋内での集会の自粛、総決起大会の中止など、活動の制約を余儀なくされてきた。
 気掛かりなのは投票率だ。4月に緊急事態宣言が発令されて以降に実施された国内の選挙で、投票率が過去最低となるケースが相次いでいる。選挙戦の低調さに加え、感染への懸念から有権者が投票所に足を運ぶのを控えたためと考えられる。
 命と健康を守ることは大切だ。だが、投票は決して不要不急ではない。政治参加の大切な権利を放棄すれば、一部の人間が政治をコントロールし、望まない方向に社会が進んでしまう恐れがある。民主主義の根幹まで感染症にむしばまれてはいけない。
 何よりも、新型コロナは多くの人の生活に深刻な影響を及ぼしている。感染を防ぐ対策、医療体制の整備、収入の激減や雇用不安が広がる経済の救済策、休校が続いた教育への対応など、有権者が直面する差し迫った問題への対処が県政に求められている。
 政治は生活に直結する。執行部の施策や予算を点検し政策を立案するのが県議の役割だ。コロナ禍という未曽有の事態を乗り切る上でも、今回の選挙は大事な意味を持つ。
 争点はコロナ対策ばかりではない。沖縄県と国が鋭く対立する名護市辺野古の新基地建設問題に、県議選の結果は大きな影響を及ぼす。
 新基地に反対する玉城デニー知事にとって、県政を支える与党議員が引き続き県議会で過半数を占めれば、国に建設断念を迫る民意の後押しを得ることになる。
 これに対し、県政野党の自民党県連は辺野古移設の「容認」で旗幟(きし)を鮮明にした。一日も早い普天間飛行場の危険性除去のため唯一、実現性のある方策だと訴える。
 2021年度末で期限を迎える沖縄振興計画への対応、全国最低の県民所得がもたらす子どもの貧困問題など、解決すべき課題が山積する。
 候補者や政党の主張を十分に吟味し、4年に一度の投票を通じて県議会に声を届けてほしい。候補者にも熱い政策論争を期待する。
 既に全国で緊急事態宣言が解除され、社会経済活動が再開し始めた。各市町村の選挙管理委員会は、県議選の投票所で換気・消毒の徹底や使い捨て鉛筆の使用など、感染防止の対策を講じる。
 30日から始まる期日前投票を利用することも、投票所の混雑緩和につながり、有効な予防策になる。感染防止に気を付けながら投票に出掛け、沖縄の未来を託す1票をしっかりと行使したい。