<社説>県の高校生困窮調査 教育格差をなくす施策を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 高校生の進路支援や子育て対策に生かすために県が実施した「県高校生調査」で、家計の困窮が高校生の学習機会を奪い、進学の希望を失わせていることが示された。

 新型コロナウイルス感染症が経済や雇用に大きな打撃を与えている今、調査時の2019年11月に比べて低所得層の困窮は一層強まっていると考えられる。国や県は子どもたちが学業を続けられ、進学の機会も平等に与えられるよう、奨学金の拡充、オンライン授業にも対応できるネット環境の整備などの施策を急ぐべきだ。
 調査は高校2年生とその保護者を対象に生活や家計、進路などについて聞いた。3年ぶり2回目となる。手取りの世帯収入が122万円未満の「困窮層」に当たる家庭が20%となり、非困窮層と比べて学業や受診経験、食生活などで差が出た。
 困窮世帯では生徒の49%がアルバイトの経験があり、うち3割はバイト代を昼食代や学用品費、家計の足しに充てるなど学校生活や家計を支えていた。さらに「平日」や「年間を通して」働いていると回答した生徒も多く、アルバイトが常態化していた。親世代が低所得にあえぎ、子どもたちは進学を諦めてアルバイトを家計の足しにするという現状がある。
 医療や食生活でも格差がある。困窮世帯では過去1年以内に必要性を感じながらも子どもを受診させなかった経験がある保護者は30%おり、野菜を毎日取っていない世帯も半数を超えた。子どもたちの健康にも悪影響を及ぼす。
 学習の機会でも保護者の88%が経済的に塾に通わせられないと回答した。コロナ禍で休校となる中、4割近くがパソコンを持たず、オンライン授業のスタートラインにすら立てない。
 進学について困窮世帯では45%が「大学まで」を望んでいるが、現実には33%が「高校まで」と考えている。進学を自ら諦めていることを示す。自由記述でも高校生からは「進学したいけどお金がないからと言われた。夢を諦めるしか方法はないのか」、保護者からは「子どもに不自由をかけている。親の無力さを感じる」などと悲痛な声が寄せられる。
 教育格差と共に情報格差も見逃せない。本年度導入された大学などの高等教育無償化を知らない生徒が8割に上り、県が授業料を全額負担する「無料塾」も困窮層の生徒の75%が知らなかった。必要な層に情報が届くよう、行政や学校現場で周知を図ることが重要だ。
 バス通学サポートや就学援助など県が実施した事業には一定の効果が表れている。教育面の施策をさらに充実させる必要がある。県は22年の復帰50年に向けて新たな施策を検討している。思い切った人材育成策を打ち出し、教育格差をなくした上で、教育立県沖縄を実現したい。